第68回NHK紅白歌合戦の平均視聴率は39.4%(関東地区)で、ワースト3位だった。この結果についてはいろいろと意見があるようだ。
かつて大晦日は家でくつろぎながら家族揃って年越しをする習慣があったし、娯楽が唯一テレビくらいしかなかった。そして、紅白をしのぐ魅力的な番組が少なかったこともあり、今では想像もつかない高視聴率を獲得することができたのだろう。
そもそも、どんなテレビ番組を見ても視聴率が悪化している現状を考えると、今回、紅白が獲得した数字は立派なものではないだろうか。
「安室奈美恵が歌ったところでは瞬間視聴率48.4%を記録し、歌手別視聴率ではトップでした。“目玉”の役割を果たすことができましたが、さすがにひとりで平均値を底上げすることはできませんでしたね。
そもそもテレビを見る人が少なくなっていますし、紅白を録画して見る人もいますから、数字だけで成功か失敗かを判断することはできないでしょう」(スポーツ紙記者)
番組自体に対する評価もさまざまだが、
「総合司会に内村光良を抜擢したのは成功でしたね。“芸能界一優しい男”と言われる彼の人間味あふれる司会進行に出演者も見ている人たちも癒されました」(芸能レポーター)
などと内村には賛美の声が多かった。構成など内容に関しても、
「歌手の選考に関しては、疑問に思うところもありますが、曲の合間のコーナーも、去年みたいにどんズベリすることなく、特に気になるところはなかったですね。安心して見ることができました」(前出・スポーツ紙記者)
おおむね成功だったと見ていいだろうが、巷の声を拾ってみると、
「紅白に特に何かを期待して見ることはないですね。ごちゃまぜの歌番組くらいにしか思いません。自分が好きなアーティストが出ているときは見ますが、それ以外はほかのことをしながら聴き流しています」(30代OL)
若い人で紅白に特別感を抱く人は少ない。
「可もなく不可もなくです。司会のウッチャンはよかったと思いますが、緊張してたのかNHKに気を使っているのか、のびのびとやっているようには見えませんでした。
会話がぎこちないところがあって、間が空くところが見られましたね。こちらが年を取ったせいか出場歌手については、名前くらいは知ってても歌っている曲は知らないという人が増えた気がします」(50代男性)
紅白視聴者のなかには、歌手も曲もまったく知らないという高齢者が増えている。
「顔を認識できる人は数人。聞いたことのない歌ばっかりで、つまらないです。テレビ東京の『年忘れにっぽんの歌』の方がよっぽどいいですよ。それと、お笑い芸人が出すぎだし、つまらないコントはいらないです」(70代女性)
と、厳しい意見が。
紅白を見る世代の高年齢化にともない、出演者に若いアイドルが増えることを歓迎しない人も多いようだ。所属アーティストが数多く出場しているにも関わらず、ジャニーズ事務所のジャニー喜多川社長までも、
「『紅白』はおじいちゃん、おばあちゃんも“ワァー”って言って楽しめる部分も欲しい」
と、ベテラン歌手の出演枠減少に不満を表している。
「NHKもその辺は考慮して、演歌の枠は残していますが、年配の方がわかる演歌歌手が少ない。お年寄り=演歌じゃないんです。
『流行歌』がなくなり歌番組も少くなった今、お年寄りが見たいのは自分の知っているヒットを歌うベテラン歌手です。制作サイドは紅白の位置づけを再考する必要があると思います」(テレビ局関係者)
これから先、テレビを見る世代はますます高齢化すると思われるが、紅白は老若の融和を目指すのか、それとも原点回帰か⁉
どっちにしろ、これだけ議論される『紅白』はやはり国民的番組なのだろう。
<芸能ジャーナリスト・佐々木博之>
◎元フライデー記者。現在も週刊誌等で取材活動を続けており、テレビ・ラジオ番組などでコメンテーターとしても活躍中。