従業員・取引先への未払い
資金繰りに窮していた実態を、元従業員の高橋瑠衣子さん(仮名)が証言する。
「'16年の年末ごろから給料が遅れるようになりました。その後は支払われても月に3万円とか、ゼロの月もあり、交通費も自腹でした。これ以上は無理と思い、昨年の秋に退職しました」
未払い賃金の総額は100万円を超えていたが、それでも働いていたのは「喜んでくださるお客様がいたから」、と高橋さんは振り返る。
「今となっては信じられないかもしれませんが篠崎社長の教えは、“お客様を一番に”でした。社長は口がうまく、ビッグマウスというか、人によく思われようとしていた感じはありました」(高橋さん)
従業員への未払い賃金があるほどだから、当然、取引先への支払いも滞っている。その結果、複数の取引先から、取引中止を告げられていた。
京都府で着物の卸しなどを行う会社の担当者が明かす。
「'11年から振り袖を卸していましたが、1年半ほど前から営業上の取引は中止しています。支払いが滞るようになったからです。現在、未回収の費用は約1千万円あります」
当初は支払いをしていたが、だんだん遅くなり、社長との電話連絡もままならなくなり、面談の約束もすっぽかされ、“月末には100万円振り込みます”と約束しても振り込まれない……というありさま。
「費用の回収はできませんので、私たちも泣き寝入りです。怒りはお金のことだけでなく、世間を騒がせて(着物業界の)信頼を裏切る行為をしたことが大きいです」(前出・担当者)
資金繰りに窮し、商品の納入ルートも閉ざされる中、人材募集広告では「業績も好調に推移。全国100店舗を目標に、上場も視野に入れ……」と大風呂敷。
前出・高橋さんは訴える。
「いちばんの被害者は、騒動に巻き込まれたお客様です。社長には罪を償ってほしい」
今年、新成人を迎えた被害者は涙に暮れるしかなかった。