同教授は今回の見直しについて、「比較対象がおかしい」と指摘する。

「低所得者の下位10%の所得と比べて、生活保護受給者の保護費のほうが高くなっているから下げるというのは間違っています。その10%の人たちには、やむなく生活保護基準以下の暮らしをしている人がたくさんいます」

受給者の子どもにも影響が

 生活保護は自家用車を持ってはいけないとか、貯金はダメなどと制約が厳しい。受給者は有資格者の2~3割にすぎないとの見方がある。

 吉永教授は京都市職員として、生活保護ケースワーカーに12年半、従事した経歴を持つ。受給者にはタチの悪い人も多いとの声もあるが、実際はどのような人たちなのか。

「本当につつましい。もらえるものはもらっとけ、みたいな人はめったにいませんでした。肌感覚で言えば、受給者の98%は世の中の片隅でおとなしく生活している。さまざまなメディアが不正受給者のニュースを取り上げますが、それはあくまでごく一部の人です」(吉永教授)

 同教授は、シングルマザーが追い詰められている実態も見過ごせないという。

「OECD(経済協力開発機構)加盟35か国の中で、日本はひとり親の貧困率が50%超と最も高く、ひとり親の就労率も80%超でトップです。つまり日本のシングルマザーたちは世界でいちばん働いているのに世界でいちばん貧困にあえいでいる」(吉永教授)

 その影響は子どもにも出る。

「ひとり親世帯の子どもはけなげ。親に代わって家事をこなしたり、なるべくお金を使わないように家にいる。弟や妹の世話をする。早く親を経済的に助けたいと大学進学を諦める子も多い。そんな状況下で保護費を下げるか、と疑問に思っています」

 と吉永教授。

 火事から生活保護受給者を救おうと闘ったのは近所の男性だった。国民の命を守るはずの首相はお金を奪おうとしているだけ。安倍政権の提唱する女性活躍や子育て支援は口先だけなのか。弱い者いじめはやめてほしい。