カルテに書かれた不必要な情報
だが、その専門の神経内科医に見逃されてしまった吉田さんの身体はボロボロ。'15年2月に宇部市内の病院に検査入院したところ、頸椎椎間板の変形、頸椎の狭窄、筋断裂、筋断裂に続発した血腫、筋膜の損傷、筋委縮などが判明した。
「首は痛いし背中は焼けるようで、かき氷をかき込んだときのキーンとする頭痛があり、足は引っ張られるような感じで、とにかくつらかった。のどの筋肉も引っ張られよるけん、誤嚥もするんよ。胸の筋肉も切れちょるけん、呼吸もしにくい。呼吸困難になって何度も病院に担ぎ込まれるような状態でした」
実際、たびたび緊急搬送された。'15年6月に運び込まれたのは、吉田さんの病気を見抜けず“心因性”と突き放したあの関門医療センターだった。だが今回は病名が判明している。筋肉の断裂も画像で確認できる。にもかかわらず担当医は、患者を小ばかにするような行動に出たという。
「私が歯を磨いていると、背後から背中の血腫を突いてくる。痛い! というと“やっぱり痛いんだ”と言ったり朝の早い時間に忍び足で来て、カーテンを開けたりしよるんですよ。服を脱いで身体をふいていることもありますからね、何度もそんなことをされるので、本当に嫌でした」
病院側のカルテには《(本日は忍び足で、カーテンをいきなりあけると)症状無く、漫画をよんでいる。話はじめると徐々に症状を訴え始める》と疑いの眼差しを向ける報告が。記入者は担当医だ。
「介護保険の手続きに必要な診断書を書いてほしいとお願いしたら“僕に書かせたければ精神科の精神鑑定を受けてください”って言いよるんですよ。病室には他の患者さんもいるのに。
退院する直前には担当医が、未成年の娘や兄に電話をして、私の病気について精神的なもので病気でもなんでもないって言いよったんです。
カルテの開示請求をしてわかりましたけど、最初に私を診た関門医療センターの医師はカルテに“疾病利得”って書いていたんです。こっちは3人の子どもを育てなければいけないのに、働かないことでどんな利得があるのか」
あまりにもいい加減な医師の対応に吉田さんの怒りは過熱し、言葉に怒気がこもる。
「当初は娘も兄も、病気ではないと思うちょった。そりゃプロである医者に“精神的なもの”と何度も言われたら信じてしまいますよね。
医者である前に人間であってほしい。何でこんなめちゃくちゃなことができるんでしょう。あの医師と病院だけは、どうしても許せんのよ。言いたいことは全部言っちゃる。そう思い裁判することを決めました」
昨年7月、吉田さんは関門医療センターを相手取り、330万円の慰謝料などを求め山口地裁下関支部に提訴した。
代理人である白石法律事務所の白石資朗弁護士は、
「病院側が行った不審な対応は、吉田さんが仮病・詐病であることを確認するためと主張しています。しかし、他の病院の診断があるにもかかわらず、患者の訴えを最初から疑ってかかっているとしか思えない。
たった1回の診察で心因性であると診断をしていること、疾病利得とカルテに記載すること、不随意運動の症状が軽いとされる朝に何度も確認しに来るのは、心因性と裏付けるためのものだと思えてしまう。これが病人を診察する態度なのでしょうか」
関門医療センターにも取材を申し込んだが、「裁判中につきコメントはできない」という返答が届いた。