女性が孤立する原因のひとつは“関係性の貧困”

『漂流女子』にも、幼い頃から両親から虐待を受けて育ち、10代で2回妊娠した少女、風俗店に勤め、父親のわからない子を妊娠した20代の女性、既婚者の男性の子どもを身ごもった30代の女性、夫との3人目の子を予期せず妊娠した40代の女性など、さまざまな立場の女性たちが登場する。彼女たちは葛藤や苦悩を経て、シングルマザー、特別養子縁組、中絶など、それぞれの人生の決断をしていく。

『漂流女子 にんしんSOS東京の相談現場から』中島かおり=著 (朝日新書) ※画像をクリックするとamazonの購入ページにジャンプします(別ウィンドウ)
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「にんしんSOS東京」には、「妊娠しているかもしれない、生理が遅れている」という妊娠の手前の相談が最も多いが、徐々に話を聞いていくと、レイプやデートDVの被害にあっていたケースもあるのだという。

「みんな、何日も悩んで、ものすごく勇気をもってお電話してくださるので。一人で頑張ってきて、抱えて、抱えて、でももう抱えられないってなったところの相談なので。それはもう、抱えているものをまずは全部下ろしていいよ、って伝えたいなと思っています

 相談者が一人きりで抱えて孤立する状況に陥る原因のひとつは、“関係性の貧困”だと中島さんは言う。

家族がいても、パートナーがいても、学校に通っていて一見、周りに人がいっぱいいるように見えたとしても、信頼できる相手や秘密を話せる人がいないんです。今の中学生くらいの子って、1回くらいはLINEのグループで仲間外れにされたり嫌な思いをした経験があるんですよね。自分のいないグループLINEで、こそこそ話の悪口が一気に拡散される。そういう恐れをみなさん持っているので、とても言えない。

 一番ショックだったのは、高校生の女の子が親に妊娠を話せない理由を聞くと、“私は結果を出していないから、親にこれ以上迷惑をかけられない”って言ったことです。受験で失敗したとか、いっぱいお金をかけてもらって習い事してるのにとか、本当に真剣な顔して言うんですよ。“自分で責任を取りなさい、人に迷惑をかけないようにしなさい”と親から実際に言われているのか、無言の圧力なのかはわかりませんが、親に甘えることができないんですよね

 このような少女たちは、保護されるべき存在でありながら、親から「失敗したときは守るよ、責任は一緒に抱えるよ」というメッセージを、小さい頃から全く受け取っていないのではないかと、中島さんは分析する。その延長線上で、レイプなど女性に非がない状況でトラブルに巻き込まれても、自分を責めて親や周りに言えなくなってしまう。