実は“キスシーン”より恥ずかしい!?

 ふたりの個性の違いは、同じ役でも小池さんが陽、加藤さんが陰というイメージでくっきりと表出。それぞれの魅力が際立った。

和樹さんと相談して決めたわけではなく、それぞれが役作りした結果です。僕のロナンが“陽”と映ったのは、希望を強く意識したからかな。僕は2年前、革命に身を投じるロナンの成長をどうしたら表現できるだろうと考えていました。展開が早くてあっと言う間に進んでいく舞台だから、“物語をつなげるためにこうあるべき”という芯の通し方が大事だと思っていて。“哲学で自由と平等を手に入れることができるんだよ”と仲間に言われて知識を吸収し、ロナンは希望を信じる。

 そして自由を手に入れようと突っ走っていく“まっすぐさ”を意識したつもりです。ひとつの希望を見いだすと突っ走るところは、僕にもありますね。僕もひとつのことをやらなきゃいけないとなると、周りが見えなくなるほど突っ走っちゃうタイプなので(笑)

 あっと言う間に仲間から信頼を寄せられるロナンに説得力を持たせ、ブロマンス(男同士の愛情)的な雰囲気まで感じさせたのは、小池さんのまっすぐなキャラクターが生きたからこそ。

小池徹平 撮影/森田晃博
小池徹平 撮影/森田晃博
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「農民が主役ですので、やはりカリスマ性も必要かなと。そのうえで泥臭い農民感も出してくれと(演出家に)何度も言われました。でも、和樹さんがまったく違うアプローチでロナンをやってくれるので、ちょっとした所作や台詞の言い回しでこうも印象が変わるものか、と気づくことができた。別の人がやっているのを見ることで、自分の芝居や変化にも気づけるんですよ」

 2年ぶりに稽古を始めて、苦労していることは?

あまりカッコつける役は好きじゃないんですけど、キメキメの台詞もあって。“ガラじゃないなぁ”と思いながらも、“ストレートでいいんだ”とわかってきました。この前もオランプ役の(神田)沙也加さんや(夢咲)ねねさんと話したとき“こんな台詞言ってたんだ!”“恥ずかしいね!”とか言っていて(笑)。

 舞台に立っちゃえば恥ずかしさなんか感じないんですけど、まだ身体になじんでいないから、キスシーンより恥ずかしいです(笑)。それに“こんなにしんどかったっけ?”と驚くほど動きますから、体力維持には気をつけなきゃ」

 今、再演に向けて小池さんは確かに“希望”を見いだしている。

「今回は、また同じことをやる気はないんです。今の自分が新たに感じるロナンにしたいし、和樹さんがやったように人間味があって暗い部分、孤独を感じさせる部分があるのも面白いなぁと思うし。一から作り直すというわけではないんですが、前に作ったものも経験もあるぶん、どう膨らませていけるのか楽しみです。実際に今、“ああ、この台詞でこんなこと、2年前には思わなかったな”ということもあって、2年間の経験がどんなふうに反映できるのか、期待はありますね。とにかく本気で、まじめにやりたいと思っています!」

『1789−バスティーユの恋人たち-』
『1789−バスティーユの恋人たち-』

<作品情報>
『1789 -バスティーユの恋人たち-』
 フランス革命を題材にフランスで生まれた、革命的なロック・ミュージカル。日本での初演は宝塚で、その演出を担当した小池修一郎がよりワイルドなアレンジで構築し直したのがこの東宝版だ。18世紀末のフランス。パリに出てきた農民のロナンが、宮廷の侍女オランプと恋に落ちながら、革命に身を投じていく姿を重層的に、ダイナミックに描く。4月9日~5月12日 帝国劇場、6月2日~25日 大阪・新歌舞伎座、7月3日~30日 博多座で上演される。

<プロフィール>
こいけ・てっぺい◎2001年、第14回「ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」でグランプリを受賞し、翌年、ドラマ『天体観測』で俳優デビュー。2004年から2016年までウエンツ瑛士と音楽デュオ「WaT」としても活動。2006年に映画『ラブ★コン』で初主演を果たし、俳優として幅広い分野で活躍。2013年に宮本亜門演出の『メリリー・ウィー・ロール・アロング』でミュージカルに初出演、以後、『ロッキー・ホラー・ショー』などで実力を発揮。2017年の菊田一夫演劇賞に。

<取材・文/若林ゆり>