九州の実家に知られずに亡くなった30代男性
高橋さんが一番辛かったのは、同世代の30代男性の孤独死だ。
その男性は、1Kの部屋にひとり暮らし。死後2週間が経過していた。部屋には、プレステ3、『スラムダンク』や『幽遊白書』のコミックといった、まさに高橋さんと同じく、30代ど真ん中の世代が懐かしさを覚える物であふれていた。部屋の中で、高橋さんは、故郷の九州の実家から送られたと思われるハガキを見つけた。それは、母親からのもので、『ちゃんと野菜食べていますか?』と書かれてあった。そして、荷物の隙間に埋もれて、大量の抗がん剤の治療薬が出てきたのだ。
「多分、この方の九州に住む両親は健在だったはずなんです。だから、病気になったら、実家に帰るという選択肢もあっと思います。しかし、ご本人はそれを選択しなかった。がんであることを隠して、東京にいたと思うんです。薬はあったので、病院にはちゃんと通ってる様子でした。
僕も仮にこの歳で自分ががんになったら、親には言えないと思うんです。まず、親に迷惑をかけたくないし、親の悲しい顔を見たくないから、がんであることは黙っているかもしれないですね。僕も友達が少ないし、女性が苦手で、彼女もいないので、病気になったらそれこそ孤独死してしまうかもしれない。だから、彼の気持ちがわかるんです。親近感を抱いてしまうんですよね。他人事じゃない、って」
特殊清掃という仕事を通じて、「死」に日々向き合い続けている高橋さんだが、自らも孤独死予備軍だと自覚しているという。がんでなくとも、突発的な病気で倒れたとして、果たして誰が見つけてくれるのだろうか――と。