――そこから、トークも練習するようになったんですか?
ほい「悔しくてね。だったら、まずは短い喋りだけでも練習してもう一回やってやろうと思って、次の『爆笑そっくりものまね紅白歌合戦』のオーディションを受けたんです。
その時は、所ジョージさんとさんまさんのものまねで、『明石家さんまさんに聞いてみないとネ』という歌ネタをやったんです。所さんの歌のあいだに、さんまさんのトークを入れたところ、評判が良かったみたいで出演が決まりました。
それで、スタッフさんに今度はちゃんとした歯を作ってきてと言われて(笑)。当時は紙でつくった歯だったので、高校生の時にバイト先が一緒だった歯科技工士にちゃんとした歯を作ってもらうことにしたんです」
――やはりさんまさんと言えば出っ歯が特徴ですが、その歯はかなり時間と手間をかけて作られたんですか?
ほい「もう6回も作り直して今の歯になっているので、かなり精巧なものになっています。ちなみに、さんまさんは出っ歯ですが、笑っても歯茎が出ません。
だからわたしが笑った時も、歯茎が出ないように歯型に合わせて作りました。そういう細かい部分にもこだわっていて、サッと付けてサッと取れるようになっているんです。
だから、どこでその歯買うんですかってよく聞かれるんですが、売ってるわけではありません。ちなみに、かつて紙でつくった歯は、何かあったときの保険のようなものなので、財布のなかにしまってありますよ」
ほいけんたのブレイク前夜
こうして重要な商売道具のひとつ「歯」が出来上がり『爆笑そっくりものまね紅白歌合戦』の「全国ホンマに似てるのか?」というコーナーに出ることになる。しかし、そう簡単にはブレイクできないのがこの世界。
ほい「番組に登場すると、驚くほど反響があり、レギュラーとして次からも出演することになりました。当然、次からは違うものまねをやれると思っていたのですが、番組からは、さんまさんのネタを求められたので、関西弁もおぼつかないまま、数年はさんまさんのネタをやり続けました。
すると、“声がかすれすぎ”“関西弁が下手”というダメ出しを各所で見聞きするようになりました。普段の声も違うし、関西人でもないから、それはしょうがないでしょ(笑)」
――再び壁にぶち当たったわけですね。
ほい「でも、それはそれで、さんまさんをちゃんと表現できていないことを考えるきっかけになりましたね。
もともとわたしが目指していた芸人の理想形は、萩本欽一さんとさんまさんだったんです。
萩本さんは、相手を活かした笑いがうまい。コント55号さんが全盛期のころ、忙し過ぎてネタを作る暇がなかったので、萩本さんはネタがなくても成立するものを生みだしたんだと思うんです。当時、坂上二郎さんは本番前にネタを知らなかったそうですが、それでも二郎さんにうまくネタを振って笑いを生んでいた。究極のフリ上手だと思います。
そして、さんまさんも、相手の面白さを上手く引き出して笑いを取ることの達人。しかも誰も傷つけないじゃないですか。それに、素人さんとの絡みが抜群にうまいんです。だから、このお二方に関しては形態だけではなく、その思考も徹底的に研究しました」