そんな中、前出の『竜之介動物病院』では地震直後、いち早く病院を避難所として開放。1500人の家族とペット1000頭を無料で受け入れ、ペットと一緒に過ごせる同伴避難所としての成功例を作った。
同院は、トリマーや飼育員など動物専門家を育てる『九州動物学院』を併設しているため、教室も開放。それでも廊下までぎっしり埋まるほどの混雑ぶりだったという。
「ケガをした動物の手当てや、入院中のペットの治療もしなければならない。まさに動物の野戦病院という感じでした。ベッドが間に合わないから、犬や猫はケージに入れたまま点滴をしていました」
噂を聞きつけて、ほかの避難所からもペット連れの家族たちが続々とやってきた。
徳田さんは被災者たちを班分けし、職員をリーダーにつけ、自治的に避難生活を送ってもらうことにした。
被災者しているのになぜか明るい
竜之介病院は、東日本大震災後、耐震構造の建物に建て替え、その際、自家発電装置と36トンの貯水槽を設置していた。建築業者からは、「熊本は必要ない」と言われたが強行。その3年後に熊本地震が起きた。
おかげで電気には困らなかったが、36トンの貯水槽は水道管が破裂したために大打撃。病院裏の小川からポンプで水を汲み上げて人間用のトイレに使った。
また、動物の餌は備蓄や支援物資があって困らなかったが、「公の避難所ではないので、数日間は人の食べ物には困った」という。それでも、人々は文句を言わなかった。
「犬や猫を飼っている人たちは、この子を守るのは自分だという意識があるから強いんです。助け合いや譲り合いで、揉めごとはいっさいなかったし、みんな被災しているのになぜか明るかった。
仲間がいたからでしょう。飼い主の不安や動揺はペットに伝染しますから、ここにいたペットは比較的、ストレスが少なかったと思います」