先月30日に広島市内で平尾容疑者は逮捕されたものの、話を聞くと、浮かない表情の島民が目立つ。
2児の母親である会社員の女性(32)は、
「まだなんとなく心配で洗濯物も外には干せないし、戸締まりも徹底しています」
と子どもたちの顔を見た。
容疑者が潜伏していた民家近くに住む72歳の女性は、
「今でも夜、外で物音がするとビクッと緊張します」
と話し、酒店で働く女性も、
「向島ならば警戒されずに家に忍び込めると思う人が出てくるんじゃないかと怖い」
と震える声で答えた。
事件前は「施錠をしない人も少なくなかった」とされるが、多くの島民にとって施錠は「習慣」になったという。中には新聞を取りに行くときも玄関にカギをかける女性も。
島の西側にある飲食店で、60代の女性客が言う。
「知人の70代男性は奥さんを亡くしひとり暮らし。見回りの警官と挨拶や会話をするうちに仲よくなったそうです。“引き揚げちゃって寂しいのう”ってこぼしていましたよ」
広島・愛媛の両県警は延べ1万5000人以上の捜査員を動員、栄養ドリンクの差し入れをする島民もいたという。
逃亡劇でクローズアップされたのが空き家の多さだ。島には現在、1089軒の空き家があり、捜索では所有者の許可なく敷地に立ち入れないことがネックになった。
「空き家が多いのは知っていたけど、1000軒以上あると聞いて驚いた」
と30代の男性。
「昔からの住民はどこの家が空いてるかは知っていたし、危ないと思ったこともありませんでしたよ」(65歳の女性)
と島民には温度差がある。