近所の70代主婦は、「おふたりで支え合って、ひっそりと静かに余生を送っていらっしゃったのにねぇ。亡くなって2か月以上たって発見されるなんて、もうかわいそうで……」と目頭を押さえた。
さらに、
「おふたりだけど、一種の孤独死ですよね。いまはどこも子どもとは別居という時代だし、ご近所もプライバシーを尊重しすぎるのでしかたない部分もありますが子どもや近所と連絡を密にしていないと、あんなかわいそうなことになってしまう。他人事じゃなく明日はわが身ですよ」と続けた。
亡くなったとみられる佐野さん夫妻の足跡をたどってみる。まず栄治さんは、60年以上前から、ここでいわゆる駄菓子屋さんを営んできた。
「お母さんはおらず、お父さんと栄治さんで店を切り盛りしていた。駄菓子のほか日用品を扱ったり、なんでも屋的に手広くやっていた。真向かいの中学校へも大量に商品を納入していましたね。
“運動会のときは儲かるよ”と笑っていました。そういった関係性もあり、奥さんに店番を頼んで中学校で非常勤の用務員をやっていたこともあったし、ガソリンスタンドでパートをしていた時期もあった」(近くの商店会店主)
再婚、そして男の子の誕生
小柄で少し小太りでメガネをかけた落語家のような雰囲気だったという。いつもニコニコしていて、気さくで優しいおじさんだった。
「ええ、子ども好きで怒った姿は1度も見たことがなかったですね。たとえ子どもが万引や悪さをしたときでも」(前出の70代男性)
栄治さんは、30歳前後のころ、ダンスで知り合った女性と結婚。しかし、15年ほど連れ添ったところで先立たれ、40代後半で現在の妻・たき子さんと再婚した。
「奥さんは近くの病院で働いていたようですね。しょっちゅう同じ服を着ている旦那さんとは対照的に、寒くないのにマフラーをしたり、帽子をかぶったり、リュックを背負う軽装だったり、年配にしてはとってもおしゃれでしたよ」(同商店会の主婦)