雅和さんはUターン後、地元の電機関係企業2、3社に職を求めたが、いずれも長くは続かなかった。プライドが高く、雇用する側からすれば華やかな経歴も邪魔でしかなかったようだ。
「そのころから部屋にひきこもり、アルコール依存症になった。お母さんは、しょっちゅう酒を買いに行かされていて“次男のことで悩んでいる。もう死にたいぐらい”とこぼしておられた。お母さんに認知症の症状が出てきたのは、そのあと」(前出の男性住人)
とうとう3年前、雅和さんは救急車で運ばれてしまう。高校の同級生が打ち明ける。
「彼の顔はアルコール依存症でパンパンに腫れあがって、黄疸が出ていたと聞きました。泥酔してどこかに激しくぶつけたのか、脊髄を損傷して歩けなくなり、部屋には排便の跡もあったらしい」
同居する母親は認知症が進んでおり、息子の異変に対処できなかったようだ。長男・智宏容疑者は故郷に戻った。
母と弟の介護をひとりで
「智宏さんは東京で大手スーパーの店長を務めていました。30代の娘さんがいますが、奥さまとは離婚されたらしく単身でした。マンションの部屋は3人で生活するには狭すぎるため、近くにアパートを借りたんです」(前出の主婦)
1Kで家賃は5万円。若い単身者向きのアパートだった。
「毎朝、自転車でマンションに来て、夜遅くアパートに寝に帰る生活でした。なにしろお母さんと弟さん2人の介護だから、朝昼晩3食作って、その間に洗濯、炊事、買い物ですからね。
お母さんは徘徊癖があったので付き添って散歩したり、弟さんの車イスを押して外へ連れ出したり、それはもう献身的な姿で、頭が下がる思いでした」(同)