「今は、攻めるしかない時期だと思ってやっています」

 初単独主演映画『去年の冬、きみと別れ』に続き、ドラマ初主演作『崖っぷちホテル!』(日本テレビ系)が放送中。そして、また新たに出演映画『Vision』が公開される岩田剛典(29)。どの作品を見ても、そこで出会う岩ちゃんの表情は初めて見るものばかり。昨年以上に、加速をつけているようにも思える俳優業について聞くと、

「『崖っぷちホテル!』以外の2つの作品は、去年撮影したものなんです。なので、自分の中で“今年は特に”という感覚はないですね」

 6月8日から公開される『Vision』は、世界最高峰の映画祭、カンヌ国際映画祭の常連で『あん』や『光』で海外からも高い評価を受ける河瀬直美監督の最新作。

「去年6月の『ショートショートフィルムフェスティバル』で監督に初めてお会いしたときに“機会があれば、監督の作品に出演させていただきたいです”とお話ししました。そうしたら、秋くらいに“出てみませんか”と連絡をいただいて。河瀬監督の作品に出るって、シンプルに面白そうだなと思って、悩むことはなかったですね」

 監督の映画では特に『あん』と『光』が好きで、光の使い方が素晴らしいと思っていたという岩田。

「出演している役者さんの芝居を見てもセリフを言っている感じがしない。ドキュメンタリーチックですよね。監督の撮影ではいつものことらしいんですが、僕も撮影中はセットの中で生活していました。山小屋に住む感じですね。電波が届かないので携帯も使えないし、お風呂も外だし。言い出したらきりがないんですけど(笑)。

 初日は、東京での生活とのギャップに衝撃を受けたんですが、撮影が始まると当たり前になっちゃう。朝起きたら、カメラが回っていて、日常が切り取られていくみたいな。監督から“あまり台本どおりにやらなくていいよ”とも言われて。できあがった作品を見て、“ここが使われたんだ”とか、“ここのシーンがないんだ”というのもありました」

 謎の青年・鈴としてスクリーンに出てくる岩田は、私たちが知る“岩ちゃん”のようであって、少し違うようにも感じる。

「演技を1度もしていないかもしれない。いや、していないです。この作品の中の僕は“素”。演じることの定義って難しいと思わされた、独特な現場でした。だから、作品を見ても不思議でしたね。自分自身がいちばんビックリしたかもしれない。えぇ、こうなったの!? って」