台本の読み込み、時間感覚、この2つの話を聞いた時に僕が感じたのは、坂上さんは心底、役者なのだなあ、ということである。坂上さんがやっていることは、バラエティー番組のMCとしては異例だが、役者としては当然のことだからだ。

 役作りのために台本を読み込む。監督が口頭でする演出やダメ出しを書き込む。演技プランを立てるため、頭の中でセリフのやりとりをシミュレーションする。天才子役と呼ばれてきた時代から長きにわたって役者をしてきた坂上さんにとっては、どれも身に染みついていることなのだろう。

 そう、坂上さんは今も、ちょっと毒舌なMCという役を演じているのだ。

 そこで今回、坂上忍さんには「最優秀MC演技賞」を勝手に差し上げ、勝手に表彰します。

 MCとしての仕事ぶり以外にも、スタッフが驚いていたことがある。

「スタッフのことをよく知っている」

 名前はもちろんのこと、番組の中でどんな役割を果たしているのか、他にどんな番組を手がけているかまで知っているという。

「坂上さんはスタッフと一緒に番組を作っているという思いが強い」

 こう思ってくれるタレントは、スタッフとしては非常にありがたい。しかし同時にいい意味で怖い存在でもある。手を抜こうものならすぐさま見透かされるからである。


<プロフィール>
山名宏和(やまな・ひろかず)
古舘プロジェクト所属。『行列のできる法律相談所』『ダウンタウンDX』といったバラエティー番組から、『ガイアの夜明け』『未来世紀ジパング』といった経済番組まで、よく言えば幅広く、よく言わなければ節操なく、放送作家として活動中。