藤田名誉教授は、かつてこんな実験をしたと話す。
「B型物質を多く持つサルモネラ菌を、人間の各血液型の血漿に混ぜ、菌の増殖を調べました。その結果、サルモネラ菌はA型とO型の血漿ではあまり増殖せず、B型とAB型の血漿では大幅に増殖しました」
A型とO型の人は抗B抗体を持つ。それがB型物質を持つサルモネラ菌の侵入に対して働き(抗原抗体反応)、菌の増殖は阻止される。そのため、A型とO型は菌に感染しにくく、仮に感染しても重症化しにくかったことが予測される。
「A型物質を持つ大腸菌でも同じ実験をしたところ、やはり(抗A抗体を持つ)B型とO型の血漿ではあまり増殖せず、(抗A抗体を持たないA型とAB型の血漿では大幅に増殖しました。肺炎球菌はB型物質を多く持っているので、B型とAB型は抵抗力が弱いと言えます」
民族の血液型分布には病気が影響
感染症のなかには、民族の血液型構成に影響を与えたものまであるという。
「まずは梅毒です。梅毒はもともとアメリカ大陸の地方病でした。1492年にコロンブス一行がアメリカ大陸からヨーロッパに持ち込み、拡大しました」
と藤田名誉教授。20世紀なかばに特効薬のペニシリンが開発されるまで猛威をふるった。
「O型の人は梅毒に感染しにくく、重症化もしません。特にAB型の人がかかりやすく、重症化しやすい。アメリカの先住民の9割がO型であることは事実ですし、ヨーロッパも比較的O型優位の人口構成になっています」
一方、南西アジアで大流行したのはコレラ。
「インドのベンガル地方で発生し、激しい下痢で身体の水分を奪われ、1〜2日でコロリと死んでしまうほど恐ろしい病気でした。
B型の人はコレラへの抵抗力があり、O型の人は重症化しやすかった。その結果、コレラが流行したインドのベンガル地方、パキスタン、アフガニスタンなどは、もともとB型優位の国ではありましたが、コレラによってO型の人口が減り、さらにB型の割合が増えたと考えられています」
一方、血液型に対するマラリアの影響を指摘するのは、長浜バイオ大学の永田教授。
「マラリアは、世界的に見て最も患者が多く、また犠牲者も多い感染症のひとつです。アフリカを中心に毎年、40万人以上が死亡しています。そのマラリアにO型は強い抵抗力を持ち、そのほかの血液型は重症化しやすいと'90年代から言われ始め、今日までにそのデータが世界中で確認されています」