37歳になっても子どもができず、夫婦での検査をすすめられた。そのとき再びトラウマとなった体験の記憶がよみがえり、「流産後の手術が怖い。あんなつらい思いをして赤ちゃんを奪われる経験は、もう2度としたくない!」と、病院で泣いて訴えた。隣にいた夫も黙って聞いていた。

「手術しなくて大丈夫。自然に流れるまで待てばいい」

 という主治医の言葉にホッとした。緊張が一気にほぐれた。

「不育症の治療の4年間、つらいとはダンナにも言えなかったんです。いま思えば、それがかなりのストレスだったんでしょうね。翌月、夫婦で検査を受ける予定日前に、自然に妊娠しました」

妊娠を周りに口止め

 しかし、そこからも不安は続く。心拍はあるのか、本当に育つのか……。検査のたびにハラハラし、初めて赤ちゃんの心音が聞けたときは、夫婦2人で泣いた。

 きょうだいと両親以外には“出産まで誰にも言わないで”と、妊娠を口止めした。ギリギリまで、子どもの出産準備もしなかった。本当に生まれてくるのか、わからないから。

 '10年8月、無事に男の子を出産。陣痛開始から約4時間の安産だった。

「不育症は、周りに同じ状況の人もいないし誰にも相談できないことがつらいです。いま思えば、もっと早く自分の気持ちを主治医に言えばよかったかな。専門家のアドバイスがあると、やっぱり心強いですからね」