里親には、大きく分けて2つの種類がある。児童相談所から委託を受け、18歳未満の子どもを自宅で預かり育てる「養育里親」と、6歳未満の子どもを実子として迎えて育てる「特別養子縁組」だ。
養育の場合、国や地方自治体から養育費や里親手当を受給できるが、親権はない。特別養子縁組は希望が多く、登録後も何年も待たされるのが現状だ。
新しい家族との生活にドキマギ
Tさんのもとに養育の話が舞い込んだのは、2年後。なんと女子高生だという。「非行少女だったら?」「私たちに育てられるのか」と、不安に思いつつ夫婦で児童相談所に向かったが、事情を聞くやいなや「応援したい」気持ちに変わる。翌日、「わが家で引き受けたい」と返事をした。
最初は生活のペースが合わず、夜中、おしゃべりに付き合って睡眠不足になった。身支度など教えなければならないこともいっぱい。感情の振幅の激しさにたびたび振り回された。
大人を信じられなくなっていた子どもの養育は、一筋縄ではいかない。それでも、朝、玄関先で見送ったときに何度も振り返ってニコニコしている少女を見ると、心がなごんだ。
「血は関係ないと思いました。日々の何げない出来事を積み重ねていくことで家族になるんだろうなぁって」
少女を無事、社会に送り出したTさん夫婦は現在、2人目に委託を受けた小学生の子育てに奮闘中。“子どものいる人生”を謳歌(おうか)している。