高齢だから、という理由だけで優先席は要らない。50歳を過ぎたら、本当に座らなければならないほど苦しくなったときに備え、原則、電車やバスの席に座るべきではない。座らない癖をつけよ。それが自分のため、それが体力づくりのためだ。
そして、自分が座っている前に若者が、なにやら疲れた様子で不機嫌そうに立ったら、すかさず立ち上がって席を譲ろうではないか。立ち上がって、次のように言うのだ。
「どうぞ、お座りください。私たちがこうやって暮らしていけるのも、年金のおかげ。その年金や医療費は、あなた方のような若い人たちが一生懸命働いてくださるから。えぇえぇ、感謝してますよ。どうぞ座ってください。そして、お疲れを取って十分に働いてください」
そう言って慇懃に話しながら座席を譲るのだ。そういう老人、年寄りが増えれば、若者は、かえって老人に敬意をもつようになるだろう。
70歳や80歳くらいで老人ぶるな
それでも座りたい、優先席は老人のための席、年寄りが座るべき席であって若い者が優先席に座るのはけしからんと思うなら、首から大きなカードをぶら下げて、大きな文字で「私は65歳の高齢者です」とか、「私は78歳の後期高齢者です」、あるいは「私は1936年生まれです」などと書いたらどうか。それで優先席なり、一般座席の前に立ったらどうか。全力で老人アピールをすればいい。
「50、60はなたれ小僧、70、80働き盛り、90になって迎えがきたら、100まで待てと追い帰せ」
という言葉があるが、70歳を過ぎた、80歳になった、というだけで老人ぶったりすること自体、いただけない。自分は年寄りである、と思っている人も、今一度思い直したほうがいいのではないだろうか。
江口 克彦(えぐち かつひこ)◎江口オフィス 代表取締役 1940年2月1日、名古屋生まれ。前参議院議員(1期)。愛知県立瑞陵高等学校を経て慶應義塾大学法学部政治学科卒。松下電器産業(現パナソニック)入社後、1967年・PHP総合研究所へ異動。秘書室長、取締役、常務取締役を経て1972年専務取締役、1994年副社長、2004年社長に就任。2009年退任。その後、執筆・講演を中心に活動していたが、「みんなの党」の渡辺喜美代表からの要請に応え、「地域主権型道州制」の政策を掲げ、2010年7月の参議院議員選挙に出馬、当選。松下幸之助のもとで23年側近として過ごし、松下幸之助に関する多数の著作がある。松下幸之助哲学の継承者、伝承者と評されている。それゆえ、松下幸之助経営に関する講演依頼も多い。また、松下幸之助の主張した「廃県置州論」を発展させ「地域主権型道州制」を提唱、国会では超党派の『道州制懇話会』の共同代表を務めた。各地で「地域主権型道州制」の講演、啓蒙を行っている。公式サイトhttp://www.eguchioffice.com/