とはいえ事務所の先輩でもある小栗旬からは、特に大きな影響を受けているようで、「どんな存在?」と聞くと、笑いながらこう話してくれた。
「目の上のタンコブ(笑)。事務所に入ってくる後輩には“先輩に追いつこうと頑張って、追いついたと思ったらもっと先にいる先輩がいる事務所にいられることは幸せなことだぞ”と言い続けています。後輩だけでなく、旬くんの存在は僕も刺激になるし、幸せなことだなって思います」
しかしそんな彼にも、役者をやめようと悩んだ時期があったそうだ。
「勢いのある後輩が出てきて、焦りに近いものを感じていた時期もありました。芝居で負けているつもりはなかったけど、人気者の仲間が出ている舞台を見に行くと、僕の出ている舞台より全然拍手が大きくて。内容よりも知名度のほうが大事なの? と思うとむなしくなって……。
それで26歳のころ、本気でやめようと思って事務所に相談しに行ったほど。でもよく考えたら、芝居ってみんなで作り上げていくものだから、僕が嫉妬していた役者たちも敵ではないって気づいて。それで、僕なりに芝居で戦っていこうと覚悟を決めてからは気持ち的にも楽になったし、仕事も楽しくなりました」
『おっさんずラブ』で口座の残高が69円に!?
映画やドラマなどオファーが絶えない現状については、こう謙遜する。
「スケジュールさえ空いてれば仕事を断ることはほとんどないですが、それはポリシーでもなく、数をこなさないと食っていけないから。僕自身は結婚したからといって変わったつもりはないですが、もしかしたら事務所の方が“田中は家族がいるから”と気を遣って、いい仕事を取ってきてくれているのかも(笑)」
『おっさんずラブ』から休む間もなく、現在はドラマ『健康で文化的な最低限度の生活』(フジテレビ系)に出演中。吉岡里帆演じる新人ケースワーカー・義経えみるの上司で、お金にシビアな係長の京極大樹を演じているが、実際の金銭感覚は真逆のようで……。
「お金に関してはルーズかも。自由に使える僕個人の口座があるのですが、用事があってお金を引き出したら残高が69円になっていて、久々に焦りました(笑)」
残高が減ったのは、意外にも『おっさんずラブ』のせい!?
「これまでご一緒した座長(主演)の方が、食事に行ったときに一切僕らに払わせなかったんです。そういう方々と稼いでいる額が違うのはわかっているけど、座長になったときは借金してでも同じようにしようとずっと思っていて。だから撮影中、後輩を連れて食事に行って払っていたら、69円になっていただけです!」
ちなみに、今作は『おっさんずラブ』を超える代表作になりそうですか?
「僕は基本的に見る人によって代表作が違う俳優だと思うので、今回のドラマを代表作だと思っていただける方もいると思います。ただ、『おっさんずラブ』とは求められていることが違いますから。出演シーンも圧倒的に違うので、もし“ケンカツ”が田中圭の代表作だ! と思っていただける方がいるなら、僕、相当すごい演技をしていますね(笑)。よい人たちに出会えて、芝居ができているのが幸せなので、そういう機会が増えるようにこれからも頑張っていきたいです」
<出演情報>
ドラマ『健康で文化的な最低限度の生活』
カンテレ、フジテレビ系 火曜夜9時~。
出演/吉岡里帆、井浦新、川栄李奈、山田裕貴、田中圭、遠藤憲一ほか