別の男性住民は、
「オウムのあとを受け継いでいるのに、遺族や被害者の補償はあまりやっていないでしょう。財産は結構あるみたいだから徹底的に絞り上げるべきですよ」
と主張した。
アレフの末端信者は執行をどう受け止めているのか、出入りする信者6人に声をかけてみた。ところが、いずれも取材拒否。半数は口を開くこともなく、目はうつろだった。
「そっとしておいてあげて」と近隣住民
7月26日には残る6人の死刑が執行された。地下鉄サリン事件の実行犯のひとりだった神奈川県伊勢原市の横山真人元死刑囚(享年55)の実家を訪ねると、1歳上の兄が玄関で取材に応じた。
「父が死刑のショックで体調を悪くしましてね。父はもともと認知症ですし、母は心臓が悪く、私が面倒をみている状態なので、すいませんが……。遺骨は戻っています。ええ、引き取りにいきました」
とだけ話した。
端本悟元死刑囚(享年51)はオウムに入信した友人を救出するために、同教団に潜入したが、ミイラとりがミイラになってしまった。入信直後、事情がわからないままに坂本弁護士一家殺害、松本サリン事件などに手を染めたとされる。東京都八王子市の自宅では、母親が玄関の扉を開けて、
「ごめんなさい。誰にも話さないことにしておりますので、ごめんなさい」
と何度も謝った。
近所の住民の多くは、
「そっとしておいてあげて」
と端本家をかばう。近所ぐるみで死を悼んでいる様子さえあった。ご近所の同情を誘うほど、母親にとってはつらい23年間だったのだろう。
学生時代に“ノーベル賞をとれる逸材”と言われながら、道を誤って地下鉄サリン事件の実行犯となってしまった広瀬健一元死刑囚(享年54)。実家は38年前、埼玉県三芳町に建てられたマンションで、いまも両親が暮らしている。3日間、訪ねたが、ずっと留守のようで、1度も応答がなかった。
教祖以外の元死刑囚12人は、希代の詐欺師たる麻原元死刑囚の洗脳の被害者という側面もある。しかし、元死刑囚の家族は一様に、人目を忍んでひっそりと生活しながら、頑なに悲しみを表現しようとはしなかった。命をもって罪を償ってもなお、許されないと感じているのか。
死刑囚の家族周辺からも、
「彼らは仏さまにはなれないよ。地獄に落ちているだろうからね」
という意見があった。
(フリーライター山嵜信明と週刊女性取材班)
〈PROFILE〉
やまさき・のぶあき ◎1959年、佐賀県生まれ。大学卒業後、業界新聞社、編集プロダクションなどを経て、'94年からフリーライター。事件・事故取材を中心にスポーツ、芸能、動物などさまざまな分野で執筆している