東京都は合計特殊出生率(1人の女性が生涯に生む子どもの数を推計したもの)が低いけれども、江東区は‘13年から7000人、子どもの人口が増えている。墨田区は4、5年で1500人増えています。他県から有明地区に子どもたちが入ってくる。家族は自治会組織にも入らず、孤立化が進みます。毎年、虐待相談件数は増えていきます。
そうしたなかで泣き声が聞こえると児相や地域の子ども家庭センターに通告される。親は、目をつけられたと思ったらすぐにいなくなる。地域に繋がらずに漂う人は増えています。
目黒区の事件で、お母さんがお父さんに迎合してしまうとしても、お父さんの生活が安定するまで香川にいましょう、という止め方もできたのでは、とも思いました。 地域でもう少し、いろいろな子どもや家族が暮らしていけるように工夫していかないといけないと思います。
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児相さえしっかりしていれば虐待死はなくなる。そんなイメージが広がる。
だが社会がやせ細り、力の弱い親が社会からこぼれ落ちる。そこに暴力が生まれるのだ。社会からこぼれ落ちまいとする人のしがみつきは強烈だ。児相にはその暴力を抑止する専門機関として力をつけてほしいと願う。
だが、地域や社会の力が適切に働けば、親は安心して子どもの育ちを支え、子どもが気兼ねなく育つ。そんな社会では、児相の役割は穏やかなものになるのではないか。そんな夢のようなことを思わされた。
【文/杉山春(ルポライター)】
<プロフィール>
杉山春(すぎやま・はる)◎1958年、東京生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。雑誌記者を経てフリーのルポライター。『ネグレクト 育児放棄―真奈ちゃんはなぜ死んだか』(小学館文庫)で第11回小学館ノンフィクション大賞受賞。著書は他に『ルポ 虐待 大阪二児置き去り死事件』『家族幻想 「ひきこもり」から問う』(以上、ちくま新書)、『満州女塾』(新潮社)、『自死は、向き合える』(岩波ブックレット)、『児童虐待から考える 社会は家族に何を強いてきたか』(朝日新聞出版)など。