SNS発キャラが長く愛されるためには
新時代のキャラクターは、ファンとともに歩んで行くのが特徴であり醍醐味と言えるだろう。では、SNS発キャラはキャラクター業界の中で今後、どうなって行くのだろうか?
ロフトの小倉氏は、
「長く愛されるためには、ファンの数とニーズに合わせた商品を適正に届けていくことと、キャラクターのブランディングがとても大事だと思います。フォロワー数が多いからとにかく商品を作りましょうとマーケットの規模を見誤ると、ブランド毀損(きそん)に陥ることもあります。またファンにとって欲しいものを作れているかという点でも、売れ行きは全く違うと実感しています。作り手と売り手、ラインセンスを管理する人が同じ方向を向いてキャラクターをブランディングできれば、末長く愛されるSNSキャラも増えていくと思います」
『ね〜ね〜』の殿塚編集長はこう分析する。
「今後もSNSキャラ界隈は成長していくと思いますが、5年、10年と長く愛されるメジャーなキャラに成長するかは、まだわからないところではあります。大きなメーカーであれば、人気を持続するためにデザインを変えたり、何かとコラボしたりして、テコ入れができる。SNSキャラは、他にどんどん新しいキャラクターが出てくる中でも、基本的に作者が漫画を描き続けるしかできませんから、人気を維持していく努力も必要になってくるでしょう」
『タヌキとキツネ』の編集担当者も、「昔よりSNS発の作品が多くなっているので、いかに多くの人の共感を得られる作品を生み出せるかが今後の課題ですね」と話し、『ネコノヒー』のキューライス氏も、「グッズが売れることは大変嬉しいことだとは思いますが、それはそれとしてとらえ、駆け出しの小さな漫画家としては地道に面白い作品を継続して発表していけるよう心がけています」と作品作りへの思いを語ってくれた。
作者とファンの幸せな集団が増えていく
2014年の『アナと雪の女王』や『妖怪ウォッチ』のヒットの後は、現在まで社会現象にまでなるキャラクターは出ておらず、キャラクター人気は細分化している。殿塚編集長はキャラクター界の未来予想図をこう描く。
「メジャーな会社から見れば規模は小さいけれど、作者個人が数千人でも熱心なファンを獲得できれば、細く長くキャラクターを維持して仕事をしていくことができるようになっているのは事実です。缶バッジやメモ帳などの小物は個人で作れるし、作品やグッズはコミックマーケットやデザインフェスタ、ネット通販で売ることができますから。需要と供給が一致した、作者とファンの幸せな集団が作られ、今後はそういった集団がたくさんできてくるんじゃないかと思います」
キューライス氏は、自身のキャラクターがファンにとってどういう存在になってほしいかという質問に、「いつまでも心の側に寄り添い、元気を分けてくれるような存在であり続けてくれたらうれしいです」と答えてくれた。
今、人々がキャラクターに求めていることを、その言葉が象徴しているようだと感じた。
(取材・文/小新井知子)