「家賃を引けば、1か月で手元に8万円が残る。生活保護を受けている側も、その大半を飲み屋のツケや借金返済に充てたり、飲酒・ギャンブルなどですぐに失ってしまう。すると、食費や酒代を他人にたかる。
1日1食程度ですませ、朝から酒をちびちび飲んで1日中、酔って過ごす。生活保護者同士、互いにすねの傷をなめ合って、ごまかしている。酒に逃げている」
と齋藤さんは生活保護受給者の弱さや、だらしなさを率直に指摘する。
宿には「100日ルール」なるものがある。生活保護を受けて入った宿でも、100日を過ぎると、自分でアパートなどを見つけて転居するよう促されるという。
「現実的には無職で生活保護の人間には、なかなか民間のアパートは貸してくれないんですよ。それでも、この生活に甘んじて酒浸りにならないで、抜け出す努力をしなければいけない。高齢者、病気の人や障害者以外はね」
2年後の齋藤さんは、どうしているのだろうか。
「最初の娘は一昨年、男の子を産んでいるので、すでに孫がいるんです。その孫と、現在11歳の長男と7歳の次男の3人で、新国立競技場で五輪を一緒に観戦したい。そのためには一刻も早くこの生活を脱して、祖父や父親として胸を張って会えるようにならなければ。
内装の技術はあるので、契約社員でもバイトでもいいですからね。また、将来的には、活気がなくなったこの商店街の再生に尽力できたらと考えています」
と力強く答えた。
齋藤さんは近所の職業安定所の“ホームレス支援事業”に疑問を投げかける。ホームレスだけでなく生活保護受給者にも認められている東京都が出している仕事のことだ。
「今年6月から約2か月間、毎日、マイクロバスが7台ぐらい来て、200~300人を乗せていくんです。道路を剥がしたり、掃除したり、写真を撮ったりする簡単な仕事ですが、朝9時から30分やって30分休憩の繰り返しで正午まで。弁当が支給されて午後3時まで待機。それで終わり。
結局、2時間も仕事をしていないのに8000円もらえた。ボクらは助かりましたし、東京都は財政に余裕があるのかもしれないけれど、こんな仕事とはいえない仕事をムリクリ作って、われわれに金をばらまいていいのかと。こんな無駄遣いを小池都知事は知らないだろうし、一般の人はどう思うだろうって」