翌年、嘉門は幼稚園時代からの幼なじみであった高倉さんという親友からある相談を持ちかけられる。
「高倉も余命宣告を受けていて、“暗いのは嫌だから、楽しい葬式にして”と頼まれました。彼は僕の父親の葬式にも参列していたから、“あんなんやってほしい?”って聞くと、“やって!”と。それで高倉の生前の姿を撮影したんです。
“ちょっと早いですけど、先に逝ってるわ。向こうでうまい店でも探しとくから。みなさんも落ち着いたら、ゆっくり来てください”。絶対に盛り上がるからこう言えって、僕がすべて指示を出しました(笑)」
'06年、高倉さんは旅立つが、泣き笑いに包まれた感動的な葬式になったという。
「父親の葬式で試したとき、これはエエなって。死ぬことがわかっている人の最晩年の映像ってなかなかないと思うし、参列者の心に深く残ると思うんです。
あんまり衰弱していたらかわいそうだけど、父親も高倉もそうではなかったから。この葬式の話を知ったほかの友人からも依頼が飛び込んできて……。僕は“おくりびと”ですね(笑)」
嘉門は自分自身の葬式にもすでにプランがあるという。
「まず“ワシはもうダメじゃ~”とか言っている僕のVTRを流しますね。それで、僕の亡骸が火葬場に運ばれるときの曲も決まっています。
それは僕のアルバム『食のワンダーランド~食べることは生きること~』に収録された『火を通せば大丈夫』という曲(笑)。笑いをとりたいよね」
送られる人も送る人もみんな笑顔─。終活を楽しんじゃうのも案外アリかも。