運命の再会

「体調が優れないし、'03年に出演した野田秀樹さんの舞台『オイル』を最後に引退するつもりで、前の事務所も辞めていたんです。

 そしたら病院で、最初のマネージャーになる予定だった現在の事務所の社長に偶然会って。それで経緯を話したら、舞台を見に来てくれたんです。見終わるなり、楽屋に来て“一緒に頑張ってみないか?”と誘ってくれて。

 実は私も舞台に出たことで、芝居の面白さを初めて知って、芝居を続けたいな……と思い始めていたこともあり、お世話になることを決めました」

 その舞台では、もうひとつ運命の出会いが。故・蜷川幸雄さんが彼女の演技を見て、大竹しのぶ主演舞台『エレクトラ』に起用してくれたのだ。

「蜷川さんには毎日ひたすらダメ出しをされて、かなり鍛えられました。そのときは本当につらくて、稽古場のトイレで泣いたことも。

 トイレから出たら、蜷川さんが近づいてきて、“才能はいつ花開くかわからない。その瞬間はいつ来るかわかんないから、辞めるなよ”と言ってくださった。

 当時は“辞めさせようとしているのは誰だよ”と内心、思っていましたけど(笑)」

 そして、現在の事務所社長やスタッフの励ましも、芸能活動を続ける大きな支えになったという。

「“主演ができる女優を目指して頑張りましょう”と、言い続けてくれたんです。蜷川さんの言葉と、この言葉がなければ挫折していたと思います」

 20代後半から30代前半は“暗黒期”だったと本人は語るが、34歳でワークショップに参加したことで、考え方が一変したと振り返る。

「そこで芝居は嘘をつくことではなく、いかに自分を投影して、役をどう生きるかということを教えてもらったんです。それを生かせたのが、'15年に出演した『ようこそ、わが家へ』からです」