そんななか、来年10月には消費税10%への引き上げが待ち受ける。森永さんは「おそらく参院選の直前にとりやめると思う。野党が増税反対で足並みをそろえているので」としながらも、もし上がるとしたら「中小企業はバタバタつぶれますよ」と断言する。
「'14年に消費税を3%引き上げたときは、消費が3%落ちて冷え込んだ。今度もそうなるでしょう。カード決済すればポイント還元する案が出ていますが、中小零細企業では、カード会社に5%ぐらい手数料で持っていかれる。売り上げが減るし入金も先になるので、資金繰りが苦しくなります。中小企業をつぶすぞと言っているのも同然です」
日本の軽減税率はインチキ
増税の痛みが襲いかかるのは庶民も同じ。とりわけ消費税には、低所得者ほど負担が大きいという問題がある。それをやわらげるために、初めて「軽減税率」制度が導入される予定だが、
「税率が8%に据え置かれるだけで軽減になっていません。インチキです。例えばイギリスでは、食料品も、公共交通機関の運賃も0%。新聞代にもかからない。生活必需品にはかけないというのが本来の軽減税率なんです」
消費税を引き上げるにあたり、安倍首相は「社会保障の維持」を理由に挙げている。
「そもそも、消費税で社会保障費をまかなおうというのが間違いです。厚生年金も健康保険も、社会保障に関しては労使で折半しているのに、消費税を払うのは消費者だけ。企業は負担しないで、むしろ還付金を受けている立場です。
社会保険料の企業負担をスウェーデン並みに増やし、法人実効税率を40%台に戻せば、莫大な税収が入る。そうすれば消費税は下げられます」
安倍政権の6年間を経て、日本はどこへ向かうのだろうか。
〈PROFILE〉
森永卓郎さん ◎1957年生まれ。経済アナリスト。獨協大学教授。東京大学卒業後、三和総合研究所(現・三菱東京UFJリサーチ&コンサルティング)等を経て現職。テレビやラジオ、雑誌ほか各メディアで活躍