当然、彼はご実家からも絶縁されて、東南アジアに流れたそう。瞬く間に人生が狂ってしまったわけですが、驚くことに、いまもどこかのカジノで働きながらギャンブルを続けていると聞いています。
ほかにも、自分が持ちえるすべての資産をつぎ込んだ末に大負けが決定し、カジノがあるホテルの一室で首を吊っていた中国人の大富豪や、100億円負けてもカジノがやめられない香港の大スターなど、カジノで“地獄”に突き落とされた方々をたくさん目にしてきました。
日本でも悲惨な人が続出する?
――壮絶ですね……。もし、仮に日本にカジノができたらそういう人たちが続出してしまうんでしょうか。
尾嶋 いやいや、大丈夫ですよ。会社や不動産を所有している、ご家族が大富豪であるなど、よほどの担保がある相手でない限り、基本的にはエージェントが大金を貸し出すことはありえないです。でないと、カジノ側もお金を回収できずに、損をしてしまいますから。
――今後、日本でもカジノ法案が可決されて、カジノ建設が現実味を帯びてきましたが、それについてはどうお考えですか。
尾嶋 私自身はとても良いことだと思っています。たとえば、マカオは中国人富裕層の誘致に成功し、カジノで年間3~4兆円ほどの収益をあげています。カジノをうまく運営できれば、日本にとって非常に大きな観光資源になるでしょう。
そもそも、現在のカジノ法案に対する意見の多くは、少し本質から乖離(かいり)しているような気がするんです。以前、バカラで106億円を溶かして話題になった、元大王製紙の会長である井川意高さんとお話した際、「現在、日本で交わされているカジノに関する議論は、童貞がAVを作るようなもの」とおっしゃっていましたが、まさにその通り。
議論している人たちの多くはカジノの現場にも携わってないし、カジノ自体を見たことがない人も多い。だから誤解が生まれるのだと思います。
――現在行われている議論のなかでは、どのような点に誤解が多いと思われますか?
尾嶋 最も誤解されているのは、「カジノ=単なるギャンブルの場」だと認識されている点ですね。マカオやシンガポール、ラスベガスなどを見るとわかるのですが、「カジノ法案」の正式名称が「IR推進法案」であるように、カジノは一言でいえば「総合型リゾート」。実際、巨大ショッピングセンターや高級ホテル、大型プール、シアターなどが多数併設されています。
「カジノ」というとブラックなイメージが先行するのかもしれませんが、その内実は「老若男女が満喫できるエンタメ施設」という捉え方が正しいと思います。ディズニーランドやUSJみたいなものですね。誰でも楽しめる場所なので、訪れているのは家族連ればかりです。
日本にカジノができたら、治安が悪くなるのでは……と言われていますが、一大リゾートができるわけなので、むしろ周辺産業は儲かりますし、雇用も生まれる。決して、悪い話ではないと思います。マカオにしても、カジノを含む総合リゾートの併設により、経済的には上向きになりましたし、犯罪率も低下しつつあります。