昔はどんな奇抜な名前でも支障はなかった
有名人の子どもだから特別、というわけではない。人名辞典から選出した、昭和初期までのキラキラネームの例は、一覧表のとおり。
「これでも、ごくごく一部です。ただ、昔は奇抜な名前をつけても、周りがそれほどまねしなかったので、あくまでマイナーな名前でいられたんです」
当時は自分が生まれた村を出ることなく、生涯を終える人も多かった。
「むしろ、都会に働きに出るほうが少数派。だから、自分の村で暮らしていくぶんには、どんな奇抜な名前でも、支障はなかったんです。コミュニティーが小さいうえ、何十年も同じ人と付き合っていく。だから、みんながその名前を覚えてくれたんです」
ただ、現代は違う。社会生活を送るうえでは、不特定多数の人と必ず接する。
「名前の原則は、1人ひとつ。誕生して14日以内に出生届を役所に提出します。現在、名前に使用できる漢字は2999文字と決まっています。その範囲の字が使われ、空欄がなく、捺印されていれば、窓口で受理されます」
つまり、読み方(ふりがな)は問われない?
「名前の漢字の読み方は、法律の定めがありません。そのため、“どう読ませようと親の自由だ!”とおっしゃる方もいますが、文字は社会の共有物。読み方の約束があるからこそ機能を果たすもので、個人が勝手に作り出すものではないはずなんです」
どうしても嫌だったら、改名することも可能ではあるが、
「軽はずみに変えられないよう、法律で厳しく定められています。本人が15歳になって、“正当事由”があれば裁判所に申し立てができます。それを認めるかどうかは、裁判所の判断になります」
無知やエゴ、間違った個性の出し方によって、わが子に社会的ハンディを背負わせるような名づけは、親として避けなくてはいけないだろう。
(出典:日本人の名まえ、名前の読み方辞典、明解名づけ辞典、名乗辞典)
《PROFILE》
牧野恭仁雄さん ◎命名研究家。30年以上にわたり、12万人以上の名づけ相談に乗ってきたスペシャリスト。『幸せの扉をひらく赤ちゃんの名前辞典』(朝日新聞出版)など著書多数