昔は、芸能人が引退して、私人になったからといって、マスコミに対して特別な申し入れがされることはなかった。だから、世間が興味があるだろうと判断した場合は、たとえ対象者が私人になっていても取材をしたものである。

 特に、一世を風靡した人たちは、多くのファンが引退後の動向に興味を持っていて、マスコミも同様だった。

 山口百恵さんがその最たる例だろう。

リスクの大きい取材

 百恵さんはつい先日も女性週刊誌で取り上げられている。もっとも彼女の場合は、ご主人も子どもたちも芸能活動をしているため、マスコミも取材する大義名分が成り立つ側面がある。

 週刊誌の記者はこう語る。

安室さんはおそらく、初めての例でしょうね。こうはっきりと要請が出されると、取材しにくい。引退しても、本を出版したり、SNSで発信したり、何かしら露出があったり、少しでも芸能界に関係があれば、取材する理由ができるのですが、彼女は完全に“表”に出なくなりましたから

 そして、それでも強引に取材した場合、そのリスクは大きいという。

そこまでしても報道しなければならない事案だったら仕方ないですが、買い物をしている様子だとか、交際相手がいるだとか、私生活に関するような記事で訴えられた場合は裁判で負けてしまう可能性が高い

 多額の賠償金を支払わねばならないことを考えたら、そんな無謀な取材はしないでしょう」(前出・週刊誌記者)

 '16年にも自宅療養中だった中森明菜の隠し撮り写真を掲載した『女性セブン』がプライバシーの侵害にあたるとして起訴され、550万円の支払いを命じられている。

 マスコミの目から解放された安室さんはいま、のびのびと“私生活”を満喫しているだろうが、ファンはこの先ずっと飢餓状態が続くことになる。

「テレビなどで、過去の映像や写真が露出することは考えられます。それだけでもファンはうれしいでしょう。こういった状態が何年か続いて、もしかして彼女が復帰するとなったら、また大フィーバーが起きそうですね」(テレビ局関係者)

 “取材自粛”は復帰を見込んだ戦略か! 考え過ぎかもしれないが……。

<芸能ジャーナリスト・佐々木博之>
◎元フライデー記者。現在も週刊誌等で取材活動を続けており、テレビ・ラジオ番組などでコメンテーターとしても活躍中。