食い違う両者の証言
一方で、良作さんは裁判でセクハラを全面否定。
《昭和38年に結婚してから現在に至るまで同居している妻がいるため“結婚してくれ”と発言することや妻と同居している住居内でセクハラ行為に及ぶことは考えられない》
《被告良作は当時76歳であり、一般的に考えてもセクハラ行為に及ぶとは考え難い年齢にあることに加え、'14年の春ごろから体調を悪くしており、血尿や熱などの症状がでている状況》
性器を露出した経緯に関しては、
《(病気による)頻尿のためビニールハウス内で隠れて小便をしたことはあったが、誰にも見られないようにしていた》
真相をうかがうべく茨城県の永田氏宅を訪ねたところ、良作さんの妻とみられる女性が「弁護士に任せているので何も話せない」と取材拒否。
そこで担当の辻洋一弁護士(先端法法律事務所)に話を聞くと、「みんなから慕われていた。(セクハラは)120パーセントない」と、断言した。
さらに近所から聞こえてきたのは良作さんの温和な素顔だった。
「ひょうきんで優しいしね、中国人からも“お父さん”と呼ばれて親しまれているように見えたけどね」
と、リンさんが訴えたセクハラ行為に対して疑問を投げかける。
一方、リンさんの弁護団の加藤桂子弁護士(増田法律事務所)は、
「普段は常識人かもしれませんが、外国人だから何をしてもいいと思って下に見ている」
とし、裁判でセクハラが認められなかったことについて、
「失望しました」
と肩を落とした。
11月12日、国会内で行われた外国人労働者野党合同ヒアリングの席上で、弁護団の指宿昭一弁護士は、
「雇う側の人間が悪人とは私は全然思っていません。奴隷労働などと言われていますが(雇用主は)それぞれ常識を持った普通の人、普通の社長なんです。制度が悪いんです。技能実習制度が普通の人を悪人に変えていくんです」
外国人労働者拡大に舵を切る前にもっと深い議論が必要なのではないだろうか。