社員やタレントから搾取する芸能プロは少なくないという

所属していたモデルやアーティストの行き場もなくなってしまうので、自分はその場では辞めることもできなかったですし、戦うこともできなかったですね……」(被害者のAさん)

 煮えたぎる鍋に顔をつけるよりも、それをしないことで、あとで怒られることのほうが怖かった─。

 芸能プロダクション社長から、しゃぶしゃぶ鍋に顔を押しつけられたとして、元社員のAさんが、11月22日に会見を開いた。

「事件は、'15年12月に芸能プロが開いた忘年会で起こりました。芸能プロのY社長に、Aさんは鍋に顔を押しつけられ、顔面に第2度の熱傷を負いました」(社会部記者)

仕事相手に対しては「人当たりが良い」

 Aさんは、Y社長に2度にわたって鍋に顔を押しつけられた。地獄の釜のように沸騰するお湯に顔をつけられるなど、何がどうあっても力ずくで抵抗して避けるべきではなかったのか。その疑問に対する被害者Aさんの答えが冒頭の言葉。日常的にY社長によるパワハラは行われていた。

「所属タレントのほとんどはAさんが集めてきたようですが、タレントたちが仕事をしてもAさんには還元されず、給料は少ないときで3万〜4万円。多くもらっても8万円に届かないほど。

 その環境で“売り上げをたてろ”と日常的に恫喝され、遅刻すると丸刈りにされ罰金10万円を要求。半日正座させられながら業務にあたった日もあったそうです」(同・社会部記者)

 Y社長が経営する会社は、渋谷区の『株式会社MELM(メルエム)』という芸能プロ。所属タレントは10数人ほどで、有名とは言い難いモデルなどが在籍している。Y社長の芸能プロと仕事をした経験のある雑誌編集者が明かす。

もともと大学のイベントサークル出身で、遊びで人脈を作ってきたタイプ。そのなかでAさんと知り合って、Aさんにかわいい女性のコネクションがあったため、Yさんが自身の会社に誘ったみたいですね。現場にはYさん自身が来ることも多かったですよ。

 チャラい感じで、仕事をする相手に対しては人当たりはよい。気前よく振る舞うこともあり、ええカッコしいなところもありますかね。身内ばかりになると今回の事件のようにパワハラをするのでしょうけど、外の人間がいるところでは損になるから、そんな素振りは見せなかったですね」

 株式会社メルエムの資本金は、たったの1万円。

“とりあえず作った”という程度の会社ですよね。Aさんが頑張って人を引っ張ってきたからこそ、タレントを抱えられた。この会社のように社員やタレントから搾取する芸能プロは少なくない

 パワハラなどの恐怖で縛ることで、自分だけ甘い汁を吸う。“鍋に顔”は行きすぎなうえ、証拠まで残っていますが、これに近い芸能プロは山ほどありますね」(前出・雑誌編集者)

 Aさんはこの件についてYさんを刑事告訴、損害賠償を求めている。