そんなキンミヤを製造しているのが、三重県四日市市楠町に本社・工場を構える『宮崎本店』である。創業は1846年。2016年に開催された三重・伊勢志摩サミットでは、同社の日本酒『宮の雪 純米酒』が各国首脳に提供されたほどの老舗だ。そんな伝統も実績もある同社を訪れた。
いざ、四日市市の『宮崎本店』へ!
東京から約2・5時間。最寄りの楠駅にはタクシーの姿もなく、人影もほとんど見られない。駅から歩いて約10分で本社までたどり着く。道すがら目につく、そこかしこの電柱に宮崎本店の看板が。そのまま住宅街を歩くと、突如、木造の真っ黒い建造物群が現れた。その一部と趣のある本社社屋は国の登録有形文化財に指定されているという。
かつては「灘の清酒、楠の焼酎」と並び称され、駅の向こうには大手酒造メーカー『宝酒造』もある焼酎蔵元のメッカ、楠町。原材料に使う鈴鹿山系の天然水はミネラル分をほとんど含んでいない、口当たりがやわらかな超軟水。
良質の水に恵まれたこの地には、最盛期には町内に30以上の蔵があったそうだが、それらの蔵が廃業するたびに宮崎本店が引き取り、ついには敷地を8000坪まで拡大しているという。
昨今のキンミヤブームをどう思うか、伊藤盛男取締役に尋ねてみると「東京3大煮込み店『岸田屋』(中央区)、『大はし』(足立区)、『山利喜』(江東区)など、名のある飲食店さんに取り扱ってもらったおかげですよ」と言葉は控えめだ。
しかし、それだけが理由ではないだろう。例えば、人気商品『シャリキン』は、キンミヤをシャーベット状に凍らせ、これを氷がわりに割りものと混ぜて作られている。実は、これは飲食店側が考案した飲み方で、商品化をリクエストされ販売に至ったという。
さらに驚いたのは、キンミヤの本来の商品名。元は『亀甲宮』というのだ。金色の亀甲型の宮の字のロゴが愛され、消費者から「キンミヤ」と呼ばれていたところを「みなさんがそう呼ぶので」と正式名称のほうを『キンミヤ焼酎』に変更したという。
「キンミヤはお客様に育ててもらっていますね」(宮崎由太社長)
顧客を大切にして、飲食店の1軒1軒に顔を出し、要望を聞く。その姿勢がブームの根底にあるのではないか。歴史が育んだ「焼酎の街」を歩き、地元で名高い清酒造りの見学(1日1組限定・要予約)をして、いまをときめく評判の焼酎を手に入れる。そんな旅を楽しんではいかがだろうか。