ゴーン氏の身柄拘束は逮捕後は22日ほど続くはずだ。これは日本における最長の逮捕・勾留日数であり、検察は、証拠を集めたり容疑者を尋問するためにこの期間を最大限に使うことが多い。

 しかし、1つの容疑ごとに逮捕・勾留が認められていることから、実際の勾留期間は検察の方針次第となる。日本経済新聞などの報道によると、ゴーン氏は勾留期限である12月10日にも再逮捕され、12月30日まで勾留される可能性がある。また、いったん起訴されれば、保釈が認められない限り勾留が続く。

 日本における逮捕と勾留の状況は、ほかの先進国の民主主義の標準から大きくかけ離れている。ゴーン氏は起訴すらされておらず、現時点では、無罪と推定され、罪を犯していない人として扱われるはずである。それにもかかわらず、すでに2週間以上勾留され、拘置所の中でも自由をひどく奪われている。

フランスでの勾留時間は最大48時間

 パリに拠点を置くフランス人の刑事弁護士であるイヴ・レベルキエ氏は、フランスでは「親類、そして弁護士に自身の逮捕を連絡することがまず許される。通常のケースでは、勾留されるのは24時間または48時間。共謀の嫌疑をかけられているのなら96時間だ」と説明する。

「(フランスであれば)弁護士は、ゴーン氏が勾留される前に同氏と30分間話すことができただろうし、尋問の際にはいつでも立ち会えただろう。ただし、ゴーン氏と話すことはできない。別の罪があったとしても、日本のように勾留の期間が延長されることはない」

「日本の問題は勾留期間の長さ以上にその状態にある。この期間中、弁護士の役割はあまりにも限定的だ」と日仏司法制度の比較を専門とする白取祐司弁護士は言う。

 ゴーン氏の事件はフョードル・ドストエフスキー著『死の家の記録』を思い起こさせる。この小説の中で、ロシアの偉大な作家であり、貴族出身の教養あるドストエフスキーは、シベリアの監獄で過ごした4年間の自分自身の経験について語っている。

 ドストエフスキーの証言は、これまで書かれた中でも、監獄の状況を訴えたものとして最も重要なものである。

 ゴーン氏はドストエフスキーのような文学の才能を持ち合わせてはいないし、小菅はシベリアの監獄でもない。

 しかし、ゴーン氏は、われわれ全員が将来何かの間違いで経験するかもしれない日本の刑事司法制度の重要な証人である。彼の拘置所での経験を明らかにすることは、日本に暮らしているすべての人々にとって(日本人であれ、外国人であれ)利益になることだろう。


レジス・アルノー『フランス・ジャポン・エコー』編集長、仏フィガロ東京特派員 ジャーナリスト。フランスの日刊紙ル・フィガロ、週刊経済誌『シャランジュ』の東京特派員、日仏語ビジネス誌『フランス・ジャポン・エコー』の編集長を務めるほか、阿波踊りパリのプロデュースも手掛ける。小説『Tokyo c’est fini』(1996年)の著者。