「人生を返して欲しい」
佐藤路子さん(仮名=60代)は、知的障害のある佐藤由美さん(仮名=60代)の義姉だ。由美さんは6歳で「精神薄弱」(現在の知的障害)の診断を受け、15歳のとき、医師に「遺伝性精神薄弱」とされ、手術を強制された。
「義妹の場合、手術を受けた台帳が残っていたので提訴しました」(路子さん)
現在、与党のワーキングチームや超党派の議員連盟によって、救済法案の骨子案が出されているが、「知的障がい者の場合は申請が難しい。本人だけでなく、家族の申請もできるようにしてほしい。また、残された家族が被害について知らない場合、被害が埋もれてしまう。国は通知する義務があります」と、申請手続きの問題点を指摘する。
東京都の北三郎さん(仮名=75)は宮城県仙台市出身。母親が亡くなり、家庭の事情で教護院(現在の児童自立支援施設)に入れられた。14歳のとき、施設の職員に連れられ病院へ行き、優生手術を受けさせられた。
「具体的な説明はなし。あとから“子どもをできなくする手術”と聞かされました。ほかに3人が手術を受けていました」
妻には病気で亡くなる数日前、初めて打ち明けた。北さんを責めることもなく“私がいなくなっても食事はとってね”と言い、息を引き取ったそうだ。
「人生を返してほしい。それが無理なら、せめて事実を明らかにしてほしい」
この日、集会に先立ち『優生手術被害者・家族の会』が発足した。メンバーは10人前後。国に謝罪を求め、啓発や相談窓口としても活動する予定だ。国は「当時は適法」の姿勢を崩していない。なぜ手術が進められてきたのか、調査し、実態を解明する責任がある。