働く女性の6割が非正規労働者という時代。障がい者雇用でも非正規は多く、立花さんも4年までしか働けない契約社員だ。会社は正社員への登用を謳ってはいるものの、過去に2例だけとハードルは高い。どう乗り切るか、事業所の支援者と一緒に考えている。

 もうひとつ、大きな「障害」がある。

「障害の特性を考えたら不向きな仕事に就かされたりして、一緒に入った同僚が次々に辞めていく。だから業務量がどんどん増えて、かなりしんどいです」

 障害への理解をはじめ、まだまだ課題は多い。

「戦力」として働く障がい者

スタッフ間でのトラブルも、周囲の助言を借りながら乗り越えたと語る鶴田さん
スタッフ間でのトラブルも、周囲の助言を借りながら乗り越えたと語る鶴田さん
【写真】仕事への思いを生き生きと語る鶴田さんと高橋さん

 障がい者が働く場所は企業だけではない。アパレルショップが立ち並ぶ東京・原宿の一角にある『ローランズ』は、カフェが併設された、おしゃれなフラワーショップ。就労継続支援A型事業所の機能も備えており、ここ原宿店をはじめ都内3店舗では計60名のスタッフが働く。そのうち、45名が障害のある人たちだ。

 7月に入社し、天王洲店で働く鶴田優子さん(仮名=35)は精神障害のひとつ、統合失調症の診断を受けている。ローランズとの出会いは、ハローワークからの紹介だったという。

「面接は原宿店でしたが、スタッフがしていた花組み作業がみんなそろっていて。“これはいい商品が作れるはず”と、その印象で決めました」(鶴田さん、以下同)

 現在は週5日、1日4時間の勤務だ。一般的に、精神障害のある人たちは体調に波があり、その振幅も激しい。まじめな頑張り屋も多く、一見、些細なことでも負担がかかり、欠勤につながることも珍しくない。

仕事をしているとノッていかなきゃいけないときがあって、それができないと頭がゴチャゴチャしてしまいます。周りに声をかけてもらいながら、私にしてもらいたいと思っていることをきちんと把握して、それ以上の無理はしないようにしています」

 ローランズで働くスタッフは、いわゆる健常者であっても、身近に障がい者がいる人が多い。

「だから、話がすごく合う。何が困難か理解してもらえるので、働きやすいです」

 経営戦略室長で現場の統括も行う佐藤美恵さんは、こう語る。

「体調の悪いときは休んで、いいときに活躍してくれればいいと考えています。仕事でつらいところ、悩んでいるところは、障がい者も私たちも変わりません。心のデコボコが大きいか、小さいかの違い」

 能力に応じて責任のある仕事を任される。こうした職場は、障がい者就労では貴重だという。

「ハローワークに行っても、障害をコントロールできなければ雇ってもらえません。健常者以上にチャンスが回ってこない。ローランズは“体調がいいときに挽回する”という発想で、チャンスをくれるところがありがたいです」(鶴田さん)