悪役・加藤和樹さんとの駆け引きが楽しみ

 スージーが戦う悪党のリーダー、残忍で凶悪なロート役をW主演で演じる加藤和樹さんとは、ミュージカル『1789-バスティーユの恋人たち-』で2度共演している旧知の仲。

凰稀かなめ 撮影/森田晃博
凰稀かなめ 撮影/森田晃博
【写真】美しい佇まい

「でも、『1789』では絡みがまったくなかったんですけどね。加藤さんってすごくいい人ですごくまじめなので、どれだけ悪になれるのかなって。この前、取材でお会いして、ずっとやりたかった役だと熱く語っていらしたので、加藤さんとの駆け引きとか心理戦がどういうふうになっていくのか、すごく楽しみです。

 会うといつも“姉さん、どうも!”って感じで気を遣ってくれるので、遠慮せず自由にやってもらいたいなと思いますね

 宝塚時代から多くのミュージカルに出演してきた凰稀さんだが、実はストレートプレーが好きだという。

芝居をしているときがいちばん楽。その役の人生を生きているときが楽なんです。だから凰稀かなめではなく、本名の自分の人生のほうがどうしていいかわかんない(笑)。本名の私はあんまり活発な人間じゃないし、すごいネクラですし、家にこもりますし(笑)

 プライベートで癒しになることや何かを楽しむ時間はそんなに必要ではない?

「特に何をするっていうこともなく家にいるのが好きなので。癒し……、あ! でも部屋に観葉植物は飾ってます(笑)。ただ、枯れるんですよ(笑)。2か月に1回、水をあげればいい植物なのに。日に当ててあげたり、窓を開けて風通しをよくしてあげたりしても、いつもしおれて元気がないんですよね。

 今年の誕生日プレゼントでも大きな観葉植物をもらったんですけど、それもまたしおれてきちゃって(笑)。植物から気を取ってしまってるのかもしれませんね。もうすぐ舞台が始まるから、栄養補給してる感じで(笑)

 実際、舞台に上がると、かなり気を持っていかれるそうで。

「観客全員とお芝居をしている感覚で常にやっているので、お客様の空気の動きとか呼吸とか息遣いが、全部、空気ですぐに察知できるので、その打撃はすごいんですよ。千秋楽の後は全力使い果たして、その日の夜から翌日の夕方まで絶対寝てます。それで起きて、2時間ご飯食べてまた寝るっていう(笑)」

 この舞台にも、もちろん全身全霊で臨む。

クライマックスで最後ステージが真っ暗闇になるので、音や息遣いで何が繰り広げられているのか、お客様が常にスージーと同じ感覚でそれを共有していけるように全体を作り上げていきたいと思います

 最後に読者へのメッセージをお願いします。

「みなさんの脳を刺激するような舞台になると思います。駆け引きであったり心理戦であったり、そこには愛もありますし、友情みたいなものもありますし、いろんな要素が含まれている作品になっていると思うので、現実を忘れてサスペンスの世界へ来ていただけたらうれしいです」

<公演情報>
『暗くなるまで待って』
ロンドンのアパートの1室。盲目の若妻スージー(凰稀かなめ)の夫サムが持ち帰った(麻薬が仕込まれた)人形を奪いに、残忍で凶悪なロート(加藤和樹)とその仲間2人が次々とやってくる。彼女をだまそうとする悪党3人組と盲目のスージーとの人形をめぐる密室での攻防を描いたスリリングなサスペンス劇。
東京公演:2019年1月25日~2月3日@サンシャイン劇場
兵庫公演:2月8日~10日@兵庫県立芸術文化センター
名古屋公演:2月16日~17日@ウインクあいち
福岡公演:2月23日@福岡市民会館大ホール
【公式HP】wud2019.com

<プロフィール>
おうき・かなめ 1982年9月4日、神奈川県出身。2000年、宝塚歌劇団に入団。2012年7月に宙組トップスター就任。『ベルサイユのばら』ほか数々の名作に主演し2015年2月に宝塚歌劇団を退団。退団後も舞台を中心に活動。今後は、舞台『銀河鉄道999』さよならメーテル~僕の永遠(東京:2019年4月20日~29日/大阪:5月10日~12日)出演。

<取材・文/井ノ口裕子>