「これはね、あんまりみなさんご存じじゃないお話なんですけど」と、小山内が語ったのはNHK『おしん』の裏話。
小山内「昔、一緒にプールへ行ったときに、橋田さんが“小山内さん、今度は私だめかもしれない”って突然言い出して。びっくりして“なんのこと?”と聞いたら、いま書いているのが朝から大根飯を食わせるような貧乏くさいドラマで、こんなものを朝から放送しても絶対ウケない、と言うの。そしたらとんでもない、始まったらすごいわけよ!」
橋田「『おしん』のときね。あの話は企画がなかなか通らなかったの。でも同じNHKの『おんな太閤記』で当てた後だったから、まあいいだろうってことでOKしてくださって。それで山形へ行って“撮影に協力してください”と言ったら、当時の知事さんは協力してくれなかったの」
小山内「でも私、イランへ行ったときにテレビから“OSHIN!”って聞こえてきてビックリしたことあったわ。『おしん』は国際的な番組なんですよ。だから、あのときの“今度はだめかも”はなんだったんだろうって」
橋田「ドラマが当たったら、後からさくらんぼ送ってきてくれたりしたんだけどね(笑)。赤木さんも網元のおかみさん役を引き受けてくださって。あれはすごくよかった」
最近のドラマはついていけない
最近のテレビドラマはほとんど見ないという2人。
その理由を聞いてみると……。
橋田「最近のドラマはセリフが短くて、ボンボン言ってすごいテンポだからついていけませんよね。『SUITS』なんか見ていても全然わからない。織田……裕二だっけ。彼はいい雰囲気になってたけど。あなた最近のドラマわかる?」
小山内「私、ドラマ見てないから。動物や昆虫のドキュメンタリーのほうが面白い」
橋田「私はBSで『相棒』や『十津川警部』のシリーズなんかの古いドラマばかり見てます。昔は夜に書いていたので、忙しくて見られなかったんですよ。あなた、あの織田裕二を育てたんじゃないの?」
小山内「育てたというんじゃないけど、その人にとって初めてっていうのはある。西田敏行とかね。でも織田裕二はしばらく見なかったけど、50代になって、いい感じの俳優になったね」
橋田「ドラマの内容は全然わからなかったけど(笑)。今年も『渡鬼』書いてくれと言われてはいるんだけど……私は遊びたいの。あなたは?」
小山内「ボランティアで忙しかったんだけど、私の顔を見ると“ドラマ書いてよ”という方がいるので、新しいものを考えているところ。元気な話にしたいなって」
橋田「そうよ、本業頑張らないと。私はもう充分働いたので、書きません(笑)。それにしても長いこと会ってなかった感じがしないけど、久々にお会いしたらやっぱり小山内さんだなって安心しました」
小山内「私もそんな感じね」
橋田「また一緒に旅行へ参りますか」
小山内「2人とも足を治さないとね」
御年93歳と88歳でも、お元気な2人。新作も期待しています!
《プロフィール》
橋田壽賀子(はしだすがこ)
脚本家。1925年、京城(現在の韓国・ソウル)生まれ。松竹初の女性シナリオライターとして活躍後、'60年代からテレビドラマへと軸足を移す。主な作品に『愛と死をみつめて』『おんな太閤記』『おしん』『春日局』『渡る世間は鬼ばかり』など。
小山内美江子(おさないみえこ)
脚本家。1930年、神奈川県生まれ。スクリプターとして活躍後、脚本家となる。主な作品に『3年B組金八先生』『徳川家康』『翔ぶが如く』など。'93年にNPO「JHP・学校をつくる会」を設立、世界中で学校などを建てる救援活動を行っている。