それはモンゴルからの留学生で、一昨年に高校総体を制してモンゴル人初の高校生チャンピオンに輝いた狼雅(ろうが・序ノ口)だ。
彼は11月の九州場所に前相撲でデビュー。初場所に序ノ口からスタートになるけど、183センチ、140キロ、筋骨隆々とした身体つきは、すでに幕内力士のよう。
胸毛や髭も濃くて、見た目もまさにベテラン力士。足首や手首など、あらゆる首が太くてガッチリ安定していて、この人はまちがいなく強くなる! と、そばで見るとブルっと震えがくる。身体は大きく動きも素早く、また土俵を降りると笑顔で礼儀正しくて気配りある19歳だ。
納谷、豊昇龍、琴手計、塚原、狼雅の、2019年に20歳になる5人のライバルたち! 彼らの活躍が今から楽しみでならない。
燃えるベテラン勢
ちなみにこうした若手たちの隆盛、ベテランはどう見ているのか?
年明けに幕内・嘉風(よしかぜ・36歳)のトークショーに参加した時のこと。彼の発言が印象に残っている。
「22歳(貴景勝たち)から見たら36歳はおじさんでしょうね。でも若手がフォーカスされ、世代交代と言われても、自分がやることは変わらないんですよ。若手の台頭も目の前で起こってる出来事の一つです。周りが変わっても自分は何も変わることはありません」
と、クールに語っていた。
ひゅ~、かっこいい! 若手が台頭するからこそ燃えて輝くベテラン勢。そういえば、年明けすぐに進退の危機も言われる横綱・稀勢の里の元へ、入門当時からのライバルである豊ノ島と琴奨菊が出稽古に行った、というニュースもあった。ベテラン勢もライバルがあってこそ、のようだ。
とにもかくにも今年も大相撲、目が離せません!
和田靜香(わだ・しずか)◎音楽/スー女コラムニスト。作詞家の湯川れい子のアシスタントを経てフリーの音楽ライターに。趣味の大相撲観戦やアルバイト迷走人生などに関するエッセイも多い。主な著書に『ワガママな病人vsつかえない医者』(文春文庫)、『おでんの汁にウツを沈めて〜44歳恐る恐るコンビニ店員デビュー』(幻冬舎文庫)、『東京ロック・バー物語』『スー女のみかた』(シンコーミュージック・エンタテインメント)がある。ちなみに四股名は「和田翔龍(わだしょうりゅう)」。尊敬する“相撲の親方”である、元関脇・若翔洋さんから一文字もらった。