彼女のことを思って書いた曲

 尾崎豊を語る上で外せない女優がいる。当時を知る人ならピンとくると思うが、尾崎の死を自分のマネージャーから聞き、号泣したという斉藤由貴だ。

 斉藤とは1990年に雑誌の対談で出会い、翌年、北海道旅行を『フライデー』され、不倫交際と報道された。

「その後、ふたりは破局したと報じられましたが、交際は続いていたようです。東京・渋谷に尾崎の仕事部屋兼別宅があり、斉藤さんは頻繁に訪れていました。それに気づいた繁美夫人が、不倫の証拠を押さえようとドアをバンバン殴りに来たなんて話を聞いたことがあります」(前出・スポーツ紙記者)

 いずれにせよ尾崎は離婚することなく、斉藤との本当の関係は本人たちにしかわからない。ただ、尾崎が彼女のことを思って書いたという曲があるのは有名な話だ。

「ふたりの関係は深いものだったと思います。『ロザーナ』という曲は、斉藤のために書いた曲なのではと言われていました。また不倫交際が報じられている真っ只中に、シングル化された代表曲『I LOVE YOU』のジャケットデザイン(青年の背中に顔を埋める髪の長い女性の絵)は、どう見ても尾崎と斉藤にしか見えないと話題になりました。

『I LOVE YOU』自体はファーストアルバムに収録されている曲なので、そもそも斉藤のことを書いた曲ではないのですが、発売のタイミングと歌詞の意味深さがリンクして、当時のスタッフたちも動揺していましたよ」(前出・芸能事務所関係者)

 尾崎の死のショックからか、寂しさからなのか、翌年の93年には川崎麻世と不倫し、94年には一般男性と結婚をした斉藤由貴。2017年にダブル不倫騒動を起こしたのは記憶に新しいが、彼女の寂しさはずっと終わることがないのかもしれない。

 そして尾崎家はというと、当時2歳だった一人息子の裕哉は29歳となり、父と同じ道を歩んでいる。バンド活動を行いながら父が遺した歌を唄うこともある。

尾崎豊展で歌う、息子の尾崎裕哉(2012年)
尾崎豊展で歌う、息子の尾崎裕哉(2012年)
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 繁美夫人も尾崎亡き後は裕哉を連れ、長い間、海外で生活することが多かったが、10年ほど前からは日本で姿も見かけられるようになった。2017年には投資トラブル報道もあったが、現在も夫の事務所で息子と夫の楽曲管理を行っているという。

 4月25日は28回目の命日。埼玉県所沢市の狭山湖畔霊園にある尾崎の墓所には、いまだに途切れることなく花が手向けられている。

 真相は尾崎豊にしかわからないまま、長い時が過ぎたーー。

<取材・文/宮崎浩>