そこで被験者のお宅に定点カメラを設置し、日々の様子を撮影させてもらう。食卓でキウイフルーツを食べる様子から、便意を催し、トイレに入り、出てくるところまで撮影する。こんなふうにずっと撮られているというのは、落ち着かないはずだ。よくぞ協力してくれたと、毎回思う。
そんな被験者の協力の中で最近もっとも驚いたのは、これまた便秘の原因である「まがり腸」の回だ。健康な人は排便の際、直腸と肛門がまっすぐになる。しかし、直腸が曲がったままで便が滞ってしまう場合がある。これが「まがり腸」だ。
番組では、便秘に悩む被験者がまがり腸かどうかを検査した。その方法は、肛門からバリウムで作った模擬便を入れ、排出するときの直腸の動きをレントゲンで観察するというものだった。打ち合わせで検査方法を聞いた時、協力してくれる人はいるのか?と思った。だが、いた。しかも複数いた。おかげで、貴重な映像を撮影することができた。彼らの献身的な協力には、本当に頭が下がる。
天然痘ワクチンを開発したエドワード・ジェンナーにしても、世界で初めて全身麻酔を成功させた華岡青洲にしても、医学史に名を残す功績の陰には、名もなき人たちの協力があった。『家庭の医学』も同じように、こうした名もなき出演者のおかげで成り立っているのだ。
そこで今回、『たけしの家庭の医学』の再現役者の皆さん、および被験者の皆さん、には、「ノーネーム医学生理学賞」を勝手に差し上げ、勝手に表彰します。
現在、ウケている番組は、タレントではなく、一般人が主役になっているものが多い。
彼らは、その存在が話題となっても、ほとんどの人は名前を覚えていない「名もなき出演者」だ。そんな彼らが今、バラエティー番組の大きな力となっている。今回は、自分の担当番組ということで、『たけしの家庭の医学』を取り上げたが、本当は、すべての「名もなき出演者」を、勝手に表彰したい。
みなさん、ありがとうございます。
これからも、「テレビ」をよろしくお願いします。
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<プロフィール>
山名宏和(やまな・ひろかず)
古舘プロジェクト所属。『行列のできる法律相談所』『ダウンタウンDX』といったバラエティー番組から、『ガイアの夜明け』『未来世紀ジパング』といった経済番組まで、よく言えば幅広く、よく言わなければ節操なく、放送作家として活動中。