「一昨年の年末に、すい臓にがんが見つかり……今年に入りまして肝臓にも……」
2月9日、八千草薫が、がん闘病を告白。4月放送開始の『やすらぎの刻~道』(テレビ朝日系)を降板し、治療に専念するという。
「倉本聰による脚本で'17年に放送された『やすらぎの郷』の続編です。前作は石坂浩二が演じる脚本家が老人ホーム『やすらぎの郷』へ入居するところから始まる物語で、浅丘ルリ子や加賀まりこなど豪華キャストが話題になりました。今回は彼らのその後が描かれるとともに、脚本家が執筆するシナリオ“道”が劇中劇として同時進行します」(テレビ誌ライター)
八千草の演じた、主人公の脚本家にとっての憧れの女優・九条摂子という役は、前作で亡くなったことになっていた。だが、倉本は上智大学教授の碓井広義氏のインタビュー取材に“このドラマには彼女が必要だ”と語っている。
《九条摂子を殺しちゃったのは誤算でした。まさか続編を作るなんて思いもしなかったですから。八千草さんは『やすらぎ』の象徴ですから。新作にもいてくれないと困ってしまう。でも、こちらの都合で生き返らせるわけにはいかない。それで、九条摂子を脳内ドラマのヒロインにしようという発想をしたんです》
八千草の収録最終日に……
倉本が八千草と初めて仕事をしたのは、'71年放送の東芝日曜劇場『おりょう』(TBS系)。それ以来、家族ぐるみの交流がある。
「倉本さんが北海道の富良野に家を買おうとしたとき、お金が足りず、八千草さんに3分の1を出してもらったそうです。また、八千草さんの母親の葬儀では、倉本さんが受付をされていたのですが、八千草さんの夫で映画監督の故・谷口千吉さんから“受付係のガラが悪いので弔問客が入りづらそうにしている”と怒られたこともあるんだとか」(テレビ局関係者)
『やすらぎの刻』は昨年11月にクランクイン。倉本は全235話を書き上げていたが、
「八千草さんの降板で、倉本さんは脚本を大幅に変更しました。劇中劇の主役は風吹ジュンさんに代わりますが、八千草さんは引き続き九条摂子の役で出演します。石坂さんの夢枕に立つなど、短い場面に登場することにしたんです」(同・テレビ局関係者)
2月12日、新たに書き加えられたシーンの撮影が行われた。八千草の収録最終日で都内スタジオには倉本の姿も。
「普段は脚本家がドラマの撮影に立ち会うことはありません。富良野に住んでいる倉本さんが現場に来たんですからよほど思い入れがあったんでしょう。八千草さんも同じ気持ちだったようで、最後の挨拶で“また来たい、終わりにしたくない”と話していました」(同・テレビ局関係者)
深い絆で結ばれた倉本と八千草の友情に、終わりはない。