『ロンバケ』は視聴率36・7%と爆発的なヒットを記録。ピアノを習い始める男子が急増するなど、社会現象を巻き起こした。

「何が残るかは時が証明する」

北川悦吏子さん 撮影/小笠原真紀
北川悦吏子さん 撮影/小笠原真紀
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「この作品から、木村拓哉くんと私が組めば視聴率をとって当たり前という図式になって。『ビューティフルライフ』のころは本当に苦しかった。最終回で40%に届くか? とスポーツ紙でも書かれたりして。放送翌日に達した(41・3%)と電話があったときは心底ホッとして、泣きました

 視聴率の呪縛からは、いまだに抜けられないと苦笑いする北川さんだが、

「でも、数字を取ったものと、10年20年たっても“あの作品が好きでした”と言われるものってちょっと違うんです。“人の心にどれだけ届いたか”は数字は教えてくれません。何が残るかは、時が証明する。それがわかるくらい長く脚本家をやってきて、よかったなとは思います

 私生活では、'10年に難病で大腸の全摘出手術を受け、'12年には脳腫瘍のため左耳の聴力を失っている。

「私は“書くこと”で生かされている。でも気負わずに、ゆっくり自分のペースで仕事をしていきたい。ただ、木村拓哉さんはまたいつか書いてみたいです。豊川悦司さんに『半分、青い。』でまた巡りあえたように」

 新たな時代に、ラブストーリーの名手はどんな作品を放つのか──。急がず、ゆっくりと待ちたい。


北川悦吏子さん ◎きたがわえりこ '61年生まれ。脚本家、映画監督。“ラブストーリーの神様”と称され、多くの大ヒットドラマを執筆