エス 野島作品だったら、『この世の果て』('94年)がいちばん好き。
木村 僕も好きです。ラストが衝撃ですよね。
エス まりあ(鈴木保奈美)が飛行機から飛び降りるという(笑)。
木村 豊川悦司も茫然ですよ(笑)。
エス あと、横山めぐみ! 素晴らしかったわぁ。
木村 硫酸! 硫酸かけられるんですよね。
衝撃の“死にざま”が忘れられない
エス 思えば、あのころのフジには冒険心がありましたよね。
木村『あなただけ見えない』('92年)なんてとんでもないドラマも。あの三上博史の、水を得た魚のような明美の演技(笑)。
エス あははは。アベクカンパニーの“ジェットコースタードラマ”ね(笑)。
木村 展開がめちゃくちゃ早くて、1週見逃したらおしまい、みたいな。みんな本気で見てましたよね。
エス『もう誰も愛さない』('91年)は、伊藤かずえの死にざまが最高! 「海ってお金で買えないものかしらねぇ」と言った数分後には、ゴミ捨て場で死体だもん。
木村 しかも、生首ですからね(笑)。そしてこの作品から、山口智子は『ロングバケーション』('96年)に行くわけですから。
エス 山口智子って朝ドラ『純ちゃんの応援歌』('88年)のヒロインだったけど、いまいちブレイクしきれなくて。『もう誰も愛さない』で悪女を演じたのが、人気女優へのきっかけだったわね。
木村 平成初期は、まだイメージを気にする女優さんが多かったですからね。炎上つながりでいえば『女王の教室』('05年)は衝撃的でしたね。スポンサーが撤退して、CMがなくなって。遊川和彦さんと野島さんは、平成の2大炎上脚本家(笑)。
エス 名作ですよね。遊川さんのメッセージ性が明確で。ちゃんと最後まで見ないと。
木村 あの“タメ”があるから最後の笑顔が効いてくる。『家政婦のミタ』('11年)もそうでしたね。
エス 最近のドラマはタメられなくて、カタルシスが小さい感じですよね。
木村 人がせっかちになったんでしょうね。