山田は、現在ラジオ番組のレギュラーやナレーションの仕事の一方で、執筆活動も行い『一発屋芸人列伝』などの著書も発表している。

安心して一発当てて(笑)

「一発屋と呼ばれる状態になると、世間から“消えた、死んだ”みたいなことを言われるようになります。露出が減ったのは事実なんだけど、“面白くない、つまんない”と言われるのは芸人としてムッとするわけです。面白いから売れたわけだし、みんな全然飯食えてるし、家族も養っている。

 芸人がゼロからイチになるときって本人の力、マンパワーでしかないんです。特に芸人は事務所のプッシュなんてまったく関係ない。一発当てるというのはその人の実力以外のなにものでもない。だから“一発芸”は“発明”なんです。誰かと同じことをやっていてもダメですからね

 一発屋芸人を貶めている人たちを山田は皮肉を込めて“ごく一部の人たち”と呼んでいる。

「“消えた、死んだ”から“才能がない、下の人間、ダメな人間”へと勝手にシフトさせる方々です。僕が最近出した『一発屋芸人の不本意な日常』の本でもっとも言いたかったのは、その一発屋芸人に向ける厳しい目を自分自身の人生に向ける勇気があるのか? 君らは、ということ。

 自分が山頂に到達するよりも、先に登った人間が転げ落ちるのを見て、お手軽に優越感に浸るしょうもない空気感を感じてしまうんですよ

 これから“一発屋芸人”になるかもしれない後輩に、どんなアドバイスを送るのか。

われわれが若いころは『一発会』なんてなかった。でも、今はHGさんが起こした『一発会』があるので、安心して一発当ててほしい(笑)。どのような状況になっても、その後の身の振り方、ノウハウ、心のケア、それはわれわれがすべて担いますから。HGさんがオッケーだったら、数年後には正式にNPO法人にしたい(笑)」


山田ルイ53世 '99年、ひぐち君と結成したコンビ『髭男爵』のツッコミ担当。最近は、自身の経験をまとめた『ヒキコモリ漂流記』(マガジンハウス)など文筆業も。近著に『一発屋芸人の不本意な日常』(朝日新聞出版)