長時間労働と不規則な生活でリスク増大

 健康格差をめぐっては、自己責任論がたびたび俎上(そじょう)にあがる。糖尿病患者に対し、麻生太郎財務相が「自分で飲み食いして、運動も全然しない。医療費捻出はあほらしい」と発言し、批判を集めたのを覚えている人もいるだろう。ただ、その認識は間違いであるとデータが教えてくれる。

 民医連が'11年~'12年にかけて2型糖尿病の40歳以下の患者800人を調査した結果、年収200万円未満が約6割を占め、半数近くが非正規雇用だった。健康格差が、働く貧困層を直撃している。

 2型糖尿病の発症には、生活習慣が大きく関係するといわれている。注目すべきは、低所得だけでなく、週60時間以上の労働で病気のリスクが高まるという点。朝食抜きで、22時以降に夕食をとる不規則な生活も、発症に影響することも明らかに。民医連・事務局長の岸本啓介さんは言う。

「ここにも格差の影響が見て取れます。非正規労働からくる生活苦でダブルワークになり、食生活が不規則になっている人は珍しくありません。糖尿病治療薬のインスリンは高価。受診はしたもののお金が続かなくなって治療が中断、手遅れになって運ばれてくることも多いようです」

 こうした問題を解決するには、どうすればいいか?

「非正規をなるべく早い段階で正社員化し、さらには最低賃金をきちんと生活できる水準にして、根本にある格差解消に努めなければ始まらない。国民健康保険料の引き下げも考えるべきでしょう」(岸本さん)

 ただ、病気は待ってくれない。いま困っている人が知っておきたい医療機関がある。全国に404施設ある『無料低額診療所』だ。

「保険証の有無を問わず、低所得者が無料や低額で受診できます。ただ、施設がない地域もあり、こうした医療機関があること自体、まだまだ知られていません」(山本さん、以下同)

 抜本的解決を目指しつつ、まずは目の前の困窮者をすくい上げることだ。

「たとえお金がなくても、治療を受けることは可能です。万が一のときは、どうか一刻も早く医療機関の門を叩いてください」

(取材・文/フリーライター 千羽ひとみ)


※全国にある無料低額診療所のリスト https://www.min-iren.gr.jp/?p=20120