「今回の現場で、和気あいあいということはまったくなかったんです」

 そう笑ってしまうほど殺伐(さつばつ)とした撮影現場だった──と語ってくれたのは東出昌大(31)。

 WOWOWの『連続ドラマW 悪党 ~加害者追跡調査~』で主人公の私立探偵・佐伯修一を演じている。

 初共演で探偵事務所の所長役を演じる松重豊(56)とは、身長(東出は189センチ)も体格もほぼ同じことは“ネタ”になったようだが、

「初日に少し軽口をたたいたくらいで、あとはほとんどお話しした記憶はないですね。もう目も当てられないくらい、寒々とした雰囲気でしたよ

 そこまでしんどい撮影だったのは、姉を殺された元警察官の私立探偵が、犯罪被害者の依頼を受け加害者を調査。「赦(ゆる)し」「償い」とは何かを問う重いテーマとなっているから。薬丸岳の同名小説が原作となっている。

「犯罪関連の書籍はかなり読みました。今回のような作品を演じるにあたって、被害者のことを知らないのは芝居以前に人間としてダメだと思ったからです」

 そう真剣に語る東出からは、ルーシー・ブラックマンさん殺害や桶川ストーカーなど社会を震撼(しんかん)させた事件に関する書籍の名前が次々と出てきた。

大の読書家の東出にとっては自然なポーズに 撮影/高梨俊浩
大の読書家の東出にとっては自然なポーズに 撮影/高梨俊浩

「事件をきっかけに日常が一変してしまう。そういう被害者に寄り添い続ける探偵役を演じるということは本当に大変なことでした。

 でも、もがき続けて浮上しようとする人たちを描いているので“救い”のあるドラマだと思います

 ところで、そんなシリアスな役作りを家族がいる自宅で行っているものなのだろうか?

「家で脚本はなかなか読めませんね。小さい子どもたちもいるし、釣り番組や将棋番組を見たいなって誘惑も多いので……」 

 東出はそう幸せそうに微笑(ほほえ)み、妻と3人の子どもが待つホームを思い浮かべているようだった。

■WOWOW『連続ドラマW 悪党 ~加害者追跡調査~』
5月12日(日)夜10時よりWOWOWプライムにて放送スタート
[全6話・第1話無料放送]