(左から)長嶋一茂、石原良純
 テレビを見ていて「ふと気になったこと」や「ずっと疑問に思っていたこと」ってありませんか──? そんな“視聴者のナゼ”に『ダウンタウンDX』など人気番組を多数担当する放送作家・山名宏和がが答える!

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「この春、長嶋一茂さんと石原良純さんの冠番組がついにスタートしますね。昔からテレビに出ているおふたりですが、ここ数年は特にブレイクしているな(もはやコンビ?)といった活躍ぶりですよね。なぜこのふたりが今の時代に求められるのでしょうか? テレビの作り手側からのご意見を伺いたいです(20代 男性)」

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 石原良純さんと長嶋一茂さん、昨年の時点でも、ふたりそろってキャスティングするのが難しいほどの人気ぶりでしたが、この春から、『ザワつく!金曜日』(テレビ朝日)、『一茂&良純の自由すぎるTV』(テレビ東京)というレギュラー番組が始まり、ふたりそろってゲストに招くのは、いよいよ困難な事態となっています。

 なぜ今、このふたりがこんなにも求められているのか?

 制作者としての見解は、いたってシンプルです。

面白いから

 もう少し丁寧に説明するならば、「ほかに代わる者のいない面白さをもつ2人だから」ということになります。

 しかしながらこれで回答としてしまうのもさすがにどうかと思うので、2人の魅力について、僕なりに考察してみます。

「天才」の一茂、「秀才」の良純

 一茂さんの面白さは、なんといってもその自由奔放さにあります。

 どんな番組にも、制作者が想定する狙いや枠組みがあります。例えば、ロケ企画なら、ぜひあれをいじってほしい、これに関して前向きな感想を言ってほしい。トークバトル企画ならば、お題そのものは受け入れてもらって、賛成か反対、どちらかの立場で意見を述べてほしい、といったことです。

 基本、出演者はその枠組みの中で動き、発言をします。芸人の中には、あえて枠組みを壊しにかかる人もいますが、それも枠組みを意識しての振る舞いです。

 しかし、一茂さんの場合、そもそもそんな枠組みすら目に入っていないように見えます。聞いたところによると、事前の打ち合わせはあまりお好きではないという話。あくまで出たとこ勝負で行く。そんな野性味あふれる姿勢が、お行儀のよい芸能人が多い今、とても新鮮です。

 一方、良純さんはというと、一茂さんとは対照的なタイプ。一茂さんが天才肌ならば、良純さんは秀才型。学級委員長タイプです。なので、普段は番組の枠組みの中にちゃんと収まってくれるのですが、何かの拍子にそこからはみ出すことがあります。

 例えば、自分の好きな世界について語るときや自分の主張を否定されたときなどです。優等生が突然、豹変する。そのギャップが、良純さんの魅力です。

 そんなふたりを混ぜると、当然のことながら、その面白さは格段に増します。

 基本パターンは一茂さんが自由に振る舞い、良純さんがそれをたしなめる。漫才コンビでいえば、一茂さんがボケで、良純さんがツッコミ。ところが、いくら注意してもあらためない一茂さんに対し良純さんがイライラし始めると、今度は一茂さんが良純さんをいじりだし、良純さんもわれを失っていくという、ボケとツッコミという単純な構図では説明できない関係性が生じます。

 ここで大事なのは、彼らはそれを狙ってやっているわけではないという点です。似たようなテイストの芸人コンビは過去にいなかったわけではありませんが、芸人はあくまで計算のうえでやっています。

 しかし、一茂さんと良純さんは、計算でやっているわけではありません。思うがまま自然体でやっているうちに、このコンビネーションが生まれてしまうのです。

 ただ、僕も何度か自分の携わる番組に出ていただいて痛感するのは、ふたりの面白さには実はムラがあるということです。スゴく面白いときもあれば、意外とそうでないときもある。

 ウナギと同じです。安定した味を求めるならば天然より養殖。天然は当たり外れが大きい。しかしそれこそが天然モノの魅力。“養殖芸能人”が多い中、そんな天然モノであることが、一茂さん・良純さんが今、世間に求められている理由なのだと思います。


<プロフィール>

山名宏和(やまな・ひろかず)
古舘プロジェクト所属。『ダウンタウンDX』『行列のできる法律相談所』のようなバラエティー純度の高い番組から、『この差って何ですか?』『たけしの家庭の医学』のような情報濃度の高いバラエティー、さらには『ガイアの夜明け』のようにきまじめな番組まで、よく言えば幅広く、よく言わなければ節操なく携わっています。