広瀬のほかに『まんぷく』('18年)の安藤サクラ、『ひよっこ』('17年)の有村架純、'19年後期『スカーレット』の戸田恵梨香など非オーディション型のヒロインも増えている。
「視聴者は新人ヒロインと自分を重ね、成長を応援しながらドラマを見る方が多かったのですが、最近、ヒロインの芝居に一定の演技力を求める視聴者の方も増えていて、認知度も実力も定評のある方にお願いするケースが増えてきました」
“磨けば光る”原石探しも
そのかわり、ヒロインのオーディションを行わないときは相手役のオーディションを行い、新しい才能との“出会い”の可能性は残している。
「オーディションで、今は未熟だが、磨けば光るのでは、という子に出会うこともありました。『あまちゃん』('13年)の能年玲奈(のん)さんはそうしたタイプだと思いますね。才能を発掘することも朝ドラ本来の大きな役割ではありますから、『なつぞら』では、なつ以外の若手を男女各々2500人くらいの応募の中から選びました」
実際の台本にあるワンシーンをアレンジして役を入れ替え、芝居への注文もしつつ、何回か演じてもらい、応募者をいろいろな角度から審査。表現力とともに柔軟性も重視するとか。
「ドラマは俳優同士のコンビネーションが重要で、ヒロインを支える周囲の若手キャスティングはとても大切です。
朝ドラはホームドラマですから、食事をしながら話すシーンも多く、日常生活を自然に演じることが求められます。それが芝居としてはいちばん難しいのですが、周囲に気を配ることができ、芝居がちゃんとできる若手俳優が、朝ドラには必要なんです」
《PROFILE》
磯智明 ◎いそ ともあき。 『なつぞら』のチーフプロデューサー。朝ドラ『春よ、来い』、大河ドラマ『風林火山』の演出や、大河ドラマ『平清盛』でチーフプロデューサーを務めた