19匹は里親のもとへ、1匹は園で飼育
荒井賢治園長(55)は、
「現場の飼育員はみな助けたいと思っていますよ。しかし、保健所に持っていくのが一般的でしょう。感染症の可能性があるし、まず園の動物を守らなければなりませんから」
と実情を打ち明ける。
同園では、健康チェックをしたうえで犬の里親を見つける事業を行っているため、1匹を除く計19匹は里親に引き取ってもらえたという。
「ただ、2回目に捨てられていた犬で約2か月早く生まれたとみられるオスは園で飼っています。大きくて、で~んとしているので“でん”と名づけて、生涯、うちに置くことになりました。ハードルを跳んだり、樽を転がしたりするドッグショーの特訓と、リードをつけてお客さんと散歩する要員として調教を積んでいます」(室井さん)
同園で今年から職員として働くようになった岡田翔太さん(18)は、里親として1匹を引き取っている。
「あえて人見知りするモカ(メス、7~8か月)の里親になったんです。名前は、なんとな~く(笑)。いまではすっかり、なついていますよ」
岡田さんは職場に近い祖父宅で暮らしている。祖父・星野栄一さん(68)が現在のモカの様子を話す。
「翔太が“最後まで愛情を持って面倒をみる”と約束したので飼いました。うちには保健所からもらってきた外飼いの番犬メル(メス、2歳)がいますが、モカは室内で飼っています。ふだんは翔太の部屋で寝起きしていますが、すでにメルとも仲よくなってね。頭がよくて、もうお座りもするんですよ。最初は震えていましたが、いまでは私にもじゃれて、じゃれてしょうがない(笑)」
犬たちは幸せな犬生をリスタートしているようだ。
捨て犬の犯人は?
許せないのは捨て犬の犯人だ。糞尿用シートをまとめ買いした大きな段ボール箱や業務用サイズのドッグフードが置かれていたことから、ブリーダーなど専門家による犯行の疑いがある。市内のペットショップや大型ホームセンターを訪ね、商品名などを手がかりに情報を集めたところ、ペット業界関係者から興味深い話を聞くことができた。
「ブリーダーはシートを使わず新聞紙で代用します。エサもそんなに安いものは与えない。品質のよいフードを食べさせないと、健康で高い値段のつく犬には育たないからです。それと、ミックス犬はブームですが小型犬の話。レトリーバー系の中・大型犬のミックスは売れないし、高値がつかないことをブリーダーは知っています。避妊・去勢手術をしない、だらしない一般の愛好家の仕業ではないか」
ヤフーや楽天など大手オークションサイトでは生体取引が禁じられているため、売買目的で繁殖させた可能性は低いのではないか、という。
宇都宮動物園は4月28日に栃木県警宇都宮中央署に被害届を提出した。
動物愛護法違反の疑いで捜査が続いている。