次に、'97年に完成した新国立劇場に問い合わせてみると、開口一番、
「えっ、羽田空港でそんなことがあったんですか。まったく存じあげませんでした。わざわざ知らせてもらって、よかったです。ありがとうございました。さっそく、うちのことも調べてみます」
と総務部の担当者。
数日後、その結果を取材することになった。
「羽田空港の記事を探して、それと同時に高砂さんに連絡して説明を要求したんですね。すると、理事、営業部長など3名の方がこちらに来られて、事情を説明されました。“羽田空港はAという人物がやったことなんです。Aはこちらの工事には来ていませんので、大丈夫です”ということでした」
と同担当者。新国立劇場も都庁同様、公的な建物なので高砂が元請けとなって発注されている。
「完成時に高砂も、うちも二重にチェックしていますからね。東日本大震災時にもまったく支障はありませんでした。もともとここは地盤が硬いところですし、震度7にも耐えられるはず。日常的にも点検していますので大丈夫だと思っております」(同担当者)
不可解な対応に終始したのが、国立新美術館だ。
「大変おそれ入りますが、美術館系・弊館の広報関係以外のご取材はお断りさせていただいております。ご理解いただきますようお願いいたします」(広報・国際室)
国有財産なのに、なぜ答えられないのだろうか。
それ以外の回答は、記事末尾の表のとおりである。これらについて、先の高砂・広報室は、
「大丈夫です。羽田空港の報道があって、ホームページにもほかの建物には影響がないと書いております。“うちは大丈夫なのか?”という問い合わせがきた場合に限ってお答えしていますので、すべてに連絡はしていません」
と話す。だが、裁判中のAさんは、こう言う。
「私の裁判は、私の異例の出世に嫉妬した上司や同僚などが、まったく罪のない私を追い落とそうと画策したもの。私を悪者にして、羽田空港のことをすませようとしている。しかし、“手抜き工事”は会社ぐるみの体質です。空調設備はいわゆるブラックボックス。天井を開けてみないとわからないし、いざ地震などが起きて開けてみても、やった人間しかわからないのが実状ですよ。第三者機関による厳密なチェックもないですからね」
関東圏に今後、30年で東日本大震災クラスの直下型地震が起きる可能性は90%とも言われている。そのとき、これらの建物の配管が無事であればよいが……。